日本でも「ケータイ小説」などといった形で、従来の「本」というメディアに載せることをこだわらない小説が登場していますが、イギリスの Penguin Books が Google Maps で小説を発表するという実験を行っています:
■ We Tell Stories - 'The 21 Steps' by Charles Cumming
小説の新しいスタイルを模索しようと、Penguin Books が始めた企画"We Tell Stories"の第1弾がこちら。We Tell Stories は6人の作家による6本の作品を、6週間で(無料で)発表するという試みで、それぞれユニークなメディアを通じて作品を読むことができます。で、第1弾の"The 21 Steps"を載せるモノとして選ばれたのが Google Maps。アクセスすると、次のような画面が表示されます:
これはまさしく Google Maps の衛星写真。バルーンの中に表示されるテキストが小説の一部で、ページを送ることによってストーリーが進んでいきます。"Next ≫"というボタンが表示されたときは「次のポイントに移動しますよ」という意味で、ボタンを押すと主人公が移動した後を辿り(移動した道が青い線となって残ります)、次のピン+バルーンが表示されます(試しに"Chapter 4"をクリックして、最初のバルーンに表示されている"Next"ボタンを押してみると、この仕掛けが楽しめますよ)。
さらにテキストだけでなく、時折こんな「挿絵」も登場します:
体験してみると分かると思いますが、小説のようでありながら、一方で映画やドラマを見ているような感覚にさせられます。他の惑星が舞台となるようなSF作品や、「事件は密室で起きた……」のようなシチュエーション限定の話だと(当然)この手法を使っても意味がありませんが、例えば『ダ・ヴィンチ・コード』のような作品で実現したら面白いだろうなという感じがします。大げさに言えば、主人公の足跡を「神の目線」で追うような感じで。さらに誰かが誰かを追う(追われる)という追跡ものなら、主人公の足取りだけでなく、追跡者・逃亡者の足取りを同時に地図上にプロットするというテクニックも使えるでしょうね。
ちなみに"We Tell Stories"ですが、全体ではこんな感じになっています:
- "The 21 Steps" - 上記の通り。
- "Slice" - ブログと Twitter 上で話が展開する
- "Fairy Tales" - 物語の進行と同時に質問が表示され、登場人物の名前やストーリーの進行を決めることで、オリジナルの物語が展開する
- "Your Place and Mine" - 小説家が作品を書いていく様子を、ネットからリアルタイムで観察できる。第1回目のセッションは日本時間で4月8日午前2:30から。
- 未発表
- 未発表
2. と 3. も面白いのですが、既にどこかで見た感じですよね。それより興味深いのは4.の"Your Place and Mine"。作品が生み出される様子がリアルタイムで見れるとは……どんな様子になるかちょっと覗いてみたいと思います。
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