"Attack of the Blogs"
先日経済誌「Forbes」に"Attack of the Blogs"という記事が掲載され、アメリカのブログ界に波紋を呼んでいます。この記事がブログのことを「リンチを行う群衆が珍重しているプラットフォームで、自由を叫びながら、実はデマや中傷、悪口を広めようとしている(the prized platform of an online lynch mob spouting liberty but spewing lies, libel and invective)」と表現してしまったために、激しい反発を呼んでいるのです。ブログ関係のトピックを扱うブログならほとんどがこの件にコメントしているので、目にした方も多いかもしれません。
その元となった記事はこちら:
Attack of the Blogs (Forbes)
この一件については、Rauru Blogさんの記事に簡潔にまとめられていますので、そちらをリンクさせていただきます:Rauru Blog 「Attack of the Blogs」
Forbesの記事の真意が「悪意を持ったブログ『も』多い」と指摘することだったにせよ、
Blogs started a few years ago as a simple way for people to keep online diaries. Suddenly they are the ultimate vehicle for brand-bashing, personal attacks, political extremism and smear campaigns.
Bloggers are more of a threat than people realize, and they are only going to get more toxic.
などという一節もあり、まるでブログが他人や他社を非難中傷する記事だらけのように見なしているかのようです。
情報の信頼性
Forbesの記事にも一理はあります。日本でも2ちゃんねるに代表される匿名掲示板にデマ・中傷が書き込まれることが問題になっていますし、事実無根の書込みがあった時にどう対処すべきなのか、もっと考えるべきでしょう。しかしForbesの主張はまるで「ブログに書き込まれていることはすべて意味の無い落書き」と言っているかのようで、既存ジャーナリズムの驕りのようなものが感じられます。だからこそ、これだけの反発を呼んでいるのではないでしょうか。
従来のメディアでは情報発信者が限定されており、それが発信される情報に対する信頼につながっていました。つまり「情報発信者は特別な知識やスキルを持った選ばれた人々で、偏見や悪意を持った人物は排除されている」という前提があったわけです。メディアに載ること自体が、情報に対する信頼性を生んでいたと言えるでしょう。
しかし実際は信頼できる情報ばかりでないことは明らかです。大手新聞社・テレビ局による情報捏造・やらせは後を絶ちません。専門書を誰に執筆してもらうかは、「誰が一番知識を持っているか」ではなく「誰が○○教授のコネを持っているか」で決まることもよくあります。情報発信者を限定することで情報の信頼性を高めるという方法は、実は一部の人間が情報をコントロールすることを許す、危険な方法でもあるのです。だからこそ、ジャーナリズムに携わる人間には高い倫理観が求められいるわけで、それがブログなど無責任なメディアに対する怒りとして現れているのでしょう。
ブログに代表されるCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)は、誰もが、多くの場合匿名で参加できるだけに、無責任な意見で溢れがちです。しかしだからといって無駄な情報ばかりではなく、良質なブログも誕生し得ることは今日のブログ界が証明している通りです。問題はむしろ、一般の人々が自由に情報発信できる「Web 2.0の時代」において、どうやって情報に信頼性を持たせるかということではないでしょうか。
どのように信頼性を生むか
Web 2.0の時代、どの情報が信頼できるかどうかを判断するのは、非常にやっかいです。ブログなどCMSが発達したおかげで、素人でも企業サイトのようなデザインのホームページを持つことが可能になりました。またRSSリーダー上で見れば、ある情報が発信されたのが企業サイトだろうが個人サイトだろうが、一覧画面上では同じレベルで表示されます。信頼性という点では「誰が発信した情報なのか」は依然として重要な要素ですが、外見やデザイン、手触りといったこれまで重要だった要素は意味がないものになってしまっています。
しかし新しい方法が登場してきています。例えばGoogleやTechnoratiのように、「被リンク数」で測るのも一案でしょう。Diggや依然ご紹介したWinkは「ユーザーからの投票」を重視するという方法を使っていますし、Memeorandumでは「限定されたブログ+被リンク数」という折衷案を採用しています。またMemeorandumに似たBlogniscientというブログ・ニュースサイトなども登場してきています(Blogniscientについては、TechCrunchに紹介記事がありますのでこちらをご参照下さい:"Blogniscient v. Memeorandum")。
これらの方法の中で、何が有効で、何を選ぶべきかはまだ定かではありません。個人毎に違う方法を選択しても良いでしょう。Forbesの記事で指摘されているように、「ブログはまだ幼児期」にあります。信頼のおける情報を選ぶ仕組みの側だけでなく、「ブログから正しい情報を得るにはどうすべきか」というユーザーの心構えのようなものも、これから生まれてくることでしょう。
既存のメディアの概念からCGMを批判するのではなく、新しいメディアの形にあった「正しい利用方法」を模索すること。それが求められているのではないかと、Forbesが巻き起こした騒動を見て感じました。
※追記
偶然ですが、日本でも同じようなことを言っている人がいました。しかしあまり反発も起きていないようで、この辺にも日米の温度差というか、ネットの状況の違いというものがうかがえる気がします。
氏家会長 ネットも規制必要(デイリースポーツonline)
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