携帯電話やiPod、PSPなどモバイル端末向けに、学習ソフトを提供する動きが増えています。例えば今朝の日経産業新聞に、こんな記事がありました:
問題集、携帯に配信--デジタルブティック、ポータル開設(日経産業新聞2006年2月2日、第2面)
例によってWEB上にはまだ記事がないので、簡単に要点を説明すると、
- デジタルブティック社は大学・高校受験や資格試験用の問題集を配信するポータルサイト「実力温泉」を2月2日から開設。
- コンテンツは学習塾や出版社からの提供を受ける。
- サービスは有料。販売・入金管理もデジタルブティックは担当し、月500万円の売上を目指す。
とのこと。この他にも、ポッドキャスティングを利用して語学講座や資格講座を配信するケースも現れています:
iPodで落語も携帯 広がる用途、美術展や資格講座も(asahi.com)
またニンテンドーDSやPSPなどで「脳を鍛える」といった学習ゲームがブームになるなど、「すきま時間」を使って勉強することが奨励されているかのようです。
確かに通勤・通学時間など、ちょっとした時間に勉強ができるというのは便利です。特にポッドキャスティングを利用した語学講座などは、ヒヤリングの勉強もできます。ただ、現状のサービスを見ていると、単に紙媒体ベースのコンテンツをデジタルに置き換えただけというのも少なくないように思います。ネット時代のモバイル端末ならではの工夫はできないものでしょうか。
以前から紹介している、『実験心理学が教える 人を動かすテクノロジ』では、一章全体がモバイル端末向けアプリケーションの考察に当てられているのですが、そこではこんな仮想のモバイル端末「スタディ・バディ」の解説があります:
パメラが生物学の復習を始めると、スタディ・バディの画面に人のシルエットを示すアイコンがたくさん表示される。これはそのとき同時に勉強しているクラスメートを示している。こうして仲間を表示することで、パメラが勉強を続ける意欲をかきたてるのである。
大学受験などの時に、自宅で勉強するよりも、学校の図書館や塾の学習室で勉強した方が、他人が勉強しているのが見えてモチベーションが湧くといった経験はないでしょうか。この仮想サービスでは、同じ環境をデジタルで再現しているわけです。同書ではこの現象を「社会的促進の原理」と呼んで分類しています:
人間は自分の行動がコンピュータ・テクノロジによって監視されていることや、他人も自分と同じことに取り組んでいることをテクノロジによって知らされると、目標行動をよく理解して、実行に移す可能性が高い。
この原理を、いまの「モバイル端末学習サービス」にも応用できないでしょうか。
スタディ・バディのようにリアルタイムで学習者が把握できなかったとしても、例えば「この問題集をダウンロードした人の数」などを表示すれば、同じ勉強をしている人がいることを示せるでしょう。またオンラインゲームのように、試験結果ランキングを集計できるようになれば、競争意欲を掻き立てることができるはずです。他にも目標値を設定して他ユーザーにも公開、目標を達成(あるいは失敗)したら他ユーザーからコメントをもらって励みにする、などといった仕組みも考えられるでしょう(同じ仕組みは既に、ダイエットや禁煙を行うオンラインコミュニティといった形で実現されています)。
いわゆるユビキタス社会の到来により、「他人の行動がリアルタイムで把握できる」アプリケーションは今まで以上に簡単に実現することができるようになります。学習系のサービスでは、この仕組みを取り入れるものが増えるのではないでしょうか。
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