「デジタル写真を共有できるウェブサイト」なんて珍しくなくなりましたが、まだまだ満たされていないニーズが残されているようです。New York Times に掲載されていた、「Flickr で家族の写真をプリント注文しようとして……」という話:
■ Photo Sharing Even the Folks Can Handle (New York Times)
記者の David Pogue さんの母親が、彼のPC上にあった画像をプリントしたいというので Flickr にアップロードし、そこから注文するようにお願いしたところ、注文が完了するまでに7回のクリック+2枚のポップアップメニュー+2つのダイアログボックスを経なければならなかったとのこと。この種のサービスに慣れていなかったお母さんは、長い時間を費やすことになってしまったそうです。
そこで「家族で使いやすい写真共有サイトはどれか?」を探すため、David さんはメジャーなサービスを考察してみることに。様々なサイトを触ってみた結果、彼が下した結論は:
Next time my mother wants to review my photos on the screen and order prints with one click, I’ll use Snapfish or Kodak Gallery. And next time I just want my friends to be able to see and grab copies of my pictures online, I’ll use Picasa Web Albums.
次に母さんが画面で写真を確認して、ワンクリックでプリント注文したい時には、Snapfish か Kodak Gallery を使うつもりだ。友人が僕の写真を見て、コピーしたい場合には、Picasa Web Albums を使うだろうけど。
ということで、Flickr ではなく Snapfish と Kodak Gallery に軍配を上げています(詳しい考察については、このエントリの最後部に訳してあります)。
当然の話ですが、同じ「写真を共有する」という行動でも、利用シーンが異なれば求められるポイントは異なります。例えば「家族みんなで楽しむ」という場合には、
- 大きくてキレイなスライドショーが見れる(PCの画面で見て楽しめるように)
- 気に入った画像はその場でプリント注文できる(受け取りが近所のコンビニ等でも行えればなお良い)
- 操作は誰でも簡単に、数クリックで行える
- 限られたユーザー(家族)しか閲覧できない
などの点が重視されるでしょう。一方「画像を通じて多くの人々と交流する」というのが目的であれば、
- アップした画像は一般公開ができ、他のサイトにも埋め込める
- 画像やユーザーに対して、コメント等のフィードバックが行える
- 「グループ」など、不特定多数のユーザーによるコラボレーションが行える
などの点が重要になるはずです。ところが現在は、David さんの考察からも分かるように、後者の方が手厚くフォローされている一方で前者に合うサービスはあまり存在していません。
と話を分けてみれば簡単なことなのですが、意外にニーズというものはごっちゃになってしまい、「このサイトのAという要素と、このサイトのBという要素が一緒になっているサイトがあればなぁ」という状況は起きやすいものです。記事を読んで、たとえ「画像共有」のように様々なサービスが乱立しているような分野でも、ターゲットとなる利用シーンを絞ってそこにあるニーズを正しく把握すれば、まだまだ勝負できる(最大手になる、という意味に非ず)ところがあるのかなぁと思った次第でした。
ちなみに David さんによるメジャー写真共有サイトのまとめはこちら(ご存知の内容も多いと思いますが、改めて状況を俯瞰するということで、全て列挙してみます):
【 FLICKR.COM 】
- 保有画像数5.25億枚、写真共有サイトの最大手。
- 強みはソーシャル機能。画像の75%は閲覧、コメント、ダウンロード等が可能で、ブログに使うこともできる。
- 「グループ」機能により、赤の他人同士が1つのテーマで画像を集めることが可能。
【 SHUTTERFLY.COM 】
- アップロードできる容量は無制限。スライドショー機能、レタッチ機能なども優れている。
- Flickr 同様、複数のユーザーが協力して1つのテーマに関する画像コレクションを作ることができる。
- プリント注文が簡単で、カレンダーやグリーティングカードまで注文できる -- むしろこのサイトの目的は「物販」で、写真共有はその目的を補完する機能。
- アップロードした画像は、投稿したユーザーが許可したユーザーしか閲覧できない。
【 WEBSHOTS.COM 】
- Flickr + Shutterfly + タイムズスクエア(広告で溢れている場所の比喩)
- アップロードできる画像数は一ヶ月に100枚まで、合計で1,000枚まで。
- 他のサービス同様、料金を払えば様々な制限を解除することが可能。
- スライドショー機能が充実。画像だけでなく、スライドショーもメールで送信することができる。
- プリント注文がやっかい。専用ページにアクセスして、小さなサムネイル画像を選択しなければならない。
【 KODAKGALLERY.COM 】
- その名の通り、Kodak が提供するサービス。ビジネスモデルは Shutterfly 型。
- そのため物販が充実する一方で、アップロードした写真を一般公開できないなど、「共有」機能は限定的(ex. 有料会員にならないと、自分がアップロードした画像を他人がオリジナルサイズでダウンロードすることが許可されない)。
- 追加料金を払うことで、CVS(アメリカのドラッグストアチェーン)でプリントした画像を受け取ることが可能。
【 PHOTOBUCKET.COM 】
- 画像だけでなく、ビデオとフラッシュアニメの保存も可能。
- アップロードした画像を、MySpace など他のサービスで使用することが可能。
- ただし1,024×768ピクセル以内のサイズしか許可されず、合計1GBまでしかアップロードできない。
- 1つのスライドショーに含められる画像は10枚まで。
【 PICASA WEB ALBUMS (photos.google.com) 】
- iPhoto や Picasa から、画像を直接アップロードできる。
- 画像やスライドショーを他サイトにエンベッドするためのコードを、1クリックで作成可能。
- アルバムやスライドショー内での画像の並びを、ドラッグ&ドロップで変更可能。
- プリント注文は1クリックで可能。
- オリジナルサイズのダウンロードも可能、アップした画像の一般公開も可能、コメント機能もあり。
- ただしプリント注文は、Shutterfly もしくは PhotoWorks にアウトソースされている(ユーザーが選択可能)。なぜ?
【 YAHOO PHOTOS (photos.yahoo.com) 】
- 無料で、容量無制限で、画像の公開/非公開も選択可能で、画像の加工ができて、他人によるレーティング・タグ付け・コメントが可能で、スライドショーが大きくてキレイで、プリント注文がワンクリックで可能!
- ただしご存知の通り、Yahoo は Flickr を買収したので、競合サービスである Yahoo Photos は閉鎖される予定。
【 SNAPFISH.COM 】
- スライドショー機能が充実。加工ツールもあり。
- プリントしたい画像を見つけたら、誰でも簡単にフラグを立てておくことが可能。
- アップロードした画像の一般公開は不可能。
- プリント注文だけでなく、ポスター、マグカップ、トランプなどの注文も可能。
- 1年に1回、何かを注文すれば、アップロード容量は無制限。
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