つい最近"Enterprise 2.0 Conference"なるものが、しかもボストンで行われていたのに、全く気づいていませんでした。ということで今更ながらレポートを読んでいるのですが、なかなか面白い事例発表等があったようです。例えばこちらの記事:
■ Build a Web 2.0 Platform and Employees Will Use It (eWeek.com)
モトローラとシスコの事例発表と、それに対する Forrester Research のアナリスト、Oliver Young 氏のコメント。「どうすればWEB2.0系ツールを企業内で使ってもらえるようになるか?」という点がテーマなのですが、Young 氏は次のように述べています:
Young described a large insurance company working to get its employee base — 30 percent of whom are near retirement age — to adopt Web 2.0 technologies as facing a real struggle. He pointed out that among 18 to 21 year-olds in general, 37 percent of them are creating content either through a wiki or a blog. Conversely, among 41 to 50 year-olds, only 12 percent are creating content.
Young 氏によると、ある保険会社(社員のおよそ30%が定年間近という企業)のケースでは、WEB2.0テクノロジーを浸透させるには大きな労力が必要だったとのことだ。彼はまた、年齢が18歳から21歳までの若者の37%がWikiやブログなどでコンテンツを作成した経験があるのに対し、41歳から50歳までの間ではそうした人々は12%しか存在していないことを指摘した。
こうした事実から Young 氏は「特に技術系ではない会社では、年齢による格差が存在する」ことを指摘しています。
一方、モトローラとシスコでは「40歳以上の人々がWEB2.0テクノロジーを最も積極的に受け入れていた」と語ったとのこと。さらにモトローラのCTO(Chief Technology Officer)、Toby Redshaw 氏はこんなことを述べています:
Redshaw said that rather than an age bias, he noticed more of an executive level bias to collaborative efforts: the higher up in the company's hierarchy the less social networking technologies get used.
Redshaw は「コラボレーションを促進させることについては、年齢による偏見よりも、役員クラスの偏見の方が大きかった。つまり、肩書きが上の方になればなるほど、ソーシャル・ネットワーキングに関する技術を使う傾向が低くなった」と述べた。
問題が世代に起因しているのか、組織上のポジションに起因しているのかは別にして、会社の上の方にいる人々はWEB2.0系ツールに(そのまま放置していては)馴染んでくれない -- ということが言えそうです。これは iUG で話し合われた過去事例などとも一致していますし、多くの方が同じような経験をされていることでしょう。
ではどうするのか?モトローラとシスコは「作れば使ってもらえるよ(まさしく"Build a Web 2.0 Platform and Employees Will Use It")」的な発言をしているのですが、実際には様々な手を打ったようです。例えば同じ記事の2ページ目には、こんな箇所が:
"I think Cisco is dead on with knowledge champions," said Young. "You need people to show you [how these things work]. It is really just a matter of seeing these things in business processes that will make this thing spread. Having someone see why tools are valuable in their business context is really the way it works."
「Knowledge champion を活用したという点では、Cisco はまったく正しいことをしたと思う」と Young 氏は述べた。「新しい技術がどうやって動くのか、見せてくれる人が必要だ。何かを広めるには、ビジネスプロセスの中に置いて見せることが重要になる。あるツールがビジネスにどんな効果をもたらすかを見せることは、効果的な手段だ。」
この"knowledge champion"の活用という点については、次の記事にも解説があります:
■ Motorola's IT Department Takes On Enterprise 2.0 (InformationWeek)
At Motorola, Intranet 2.0 started fairly quietly and grew organically by word of mouth and through the use of 250 "knowledge champions" strategically placed throughout the company to evangelize the new technologies.
モトローラでは、Intranet 2.0 (※プロジェクト名)は静かにスタートし、クチコミと250名の「knowledge champion」を通じてオーガニックに広まった。「knowledge champion」は会社全体に戦略的に配置され、新しいテクノロジーの啓蒙活動を行った。
ということで、ツールを導入して後は放置プレイしてたわけではなく、啓蒙活動を戦略的に行っていたようです(それが当然なわけですが)。実際に knowledge champion な人々が、どんな活動を行ったのかまで解説されていると良かったのですが。
先日のAMNブログイベントでも、「ブログの意義を会社の上層部に理解させるにはどうすればよいか?」という質問があり、切り替えしに困った僕は「少しずつ導入して成功例を作り、既成事実を積み重ねるしか……」という曖昧な答えをしてしまったのですが、やっぱり「実例を見せる」というのは有効な手段の1つのようですね(と自信を持ってみたり)。個人的には、WEB2.0系のツールは思想のレベルから異なっているので、理論というか企画書だけで上層部を説得するのは難しいと思います。例えば小さなプロジェクトでWikiなどを導入してみて、「ホラ、なかなか使えるツールでしょ?」という感じでクチコミ経由で評価が広まっていく、なんてのが1つの理想像なのかなと。
ちなみに前述のモトローラCTO・Redshaw 氏も、「エンタープライズ2.0系の技術についてROI出すのは難しい」とコメントしています。出せないROIならさっさと捏造仮置きして、現場で成果を出すことに専念した方がよいのかも。
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