"We Are Smarter Than Me: How to Unleash the Power of Crowds in Your Business"を読了。タイトルから分かる通り、集合知やクラウドソーシングなどなど、不特定多数の人々のチカラを活用することについての本です。面白いのは、この本自身がウェブを通じたコラボレーション(www.wearesmarter.org という専用サイトを設け、そこに大勢の人々が参加)により作成されたという点。いちおうこの企画の中心となった、Barry Libert と Jon Spector という2人の名前が著者の筆頭に挙げられているものの、何百もの人々の名前が "contributors" として裏表紙に記載されています。
そんな話題性もあり、期待しつつ読んだのですが、正直なところ得るものはそれほど多くありませんでした。確かに世界中から様々な事例が集められていて、コラボレーションのチカラを感じさせる面はあります。しかしそこから導き出されるアドバイスは、「参加者を喜ばせよう」「参加者の自主性を尊重しよう」など、無難なものがほとんど。また本全体に一貫して流れるメッセージ、というものもあまり感じられません。この本は1本の論文ではなく、アンソロジーと捉えた方がいいかもしれません。
アンソロジーであれば、以前シロクマ日報でご紹介した"The Age of Conversation"(会話の時代)という例があります。こちらは個々のパートの著者が明確になっていて、それぞれの部分が論文として独立しています。従って本全体の一貫した意見というものはないものの、様々なテーマについて鋭い視点や、ユニークな意見といったものが見られました。もちろんその全てに対して賛同できる、というわけではないのですが。
逆に言うと、"We Are Smarter Than Me"には「それは違うだろ」と感じる意見はあまりありません。この本が書き上げられる様子を観察していたわけではありませんが、やはりコラボレーションの中で「とがった意見」を押し通すことの難しさというものが、この本を悪い意味で80点の本にしているのではないかと思います。この本自身をケーススタディの題材にしてみても面白いのかも。
てなわけで期待通りではなかったのですが、前述した通り、「集合知」「クラウドソーシング」などの事例集としては十分活用できそうです。ウェブを使わない事例なども取り上げられているので、興味のある方はどこかでご一読を。
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