※まず誤解のないように、今回荒川沖駅で起きた殺傷事件について、絶対に許せない事件であると考えていることを明記しておきます。僕は筑波大学に在籍していたことがあるので、今回の事件を人ごとのようには感じていません。
その上で、以下の記事を読んで「またか」という思いに駆られました:
■ ゲーム好き、家族と会話なく 8人殺傷の金川容疑者 (イザ!)
今回の事件の容疑者について、こう報じられています:
妹2人と弟1人がおり、家族との会話はほとんどなかった。部屋には100冊余りの漫画本やゲームが並んでいたという。また、近所の人がゲームセンターで遊ぶ姿をみかけていた。
記事のタイトルと、この描写。はっきりとは書かれていませんが、読んだ人はこう感じるのではないでしょうか「ああ、またゲームと漫画好きのオタクが事件を犯したんだな」。
今回の容疑者を犯行へと駆り立てたものが、漫画やゲームであると科学的に証明されたのだとすれば、こう書かれても仕方ないでしょう。しかし現時点ではそんな資料は出ていないはずですから、容疑者の家に「100冊余りの漫画本やゲームが並んでいた」ことは1つの属性でしかありません(ちなみにこの表現だと、漫画とゲームあわせて100個だったのか、漫画本が100冊でゲームは少しだったのかよく分かりませんが。っていうか漫画100冊ってそんなに異常?)。「容疑者の家にはトイレがあった」「容疑者は若い男性だった」と書くのと同じことです。
それをあえて「容疑者の部屋には100冊余りの漫画本やゲームが並んでいた」と書くのは、記者の方が「この事実と犯行には何か結びつきがあるに違いない」と考えていたからでしょう。考えていなかったとしても、読者はそのように捉えてしまうのではないでしょうか。こうやって、「犯行との直接的な結びつきが証明されていないにも関わらず、なぜか容疑者が漫画やゲーム好きであったことが強調される」という現象は今回が初めてではありません。それで、「またか」と感じたわけです。
仮に僕が誰かを殺したとしたら、
「容疑者の部屋には、100冊あまりのビジネス書が並んでいたという。」(=仕事人間でストレスが溜っていたのかしら!)
「容疑者はブログを開設していて、日に何度も更新することがあったという。」(=やっぱりパソコンばっかだと頭がおかしくなるのね!)
「容疑者はクマのぬいぐるみを愛好し、よく街中で撮影しているのが目撃されていた。」(=変態!?)
などという報道がなされるのでしょうか。マスコミがこの手のノリの報道を控えるようになるのは当分先のことになるでしょうから、世の仕事人間・ブロガー・クマ好きな人々のためにも、絶対に犯罪には手を染められないなと感じた次第です。
ちなみに「ゲームが頭を悪くする云々」論者の方々には、こちらの本にも目を通して欲しいと思います:
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