米コロラド州の新聞記者が、事故で亡くなった3歳の少年の葬儀を Twitter でレポートし、論争になっているとのこと:
■ Paper's Decision to Twitter 3-Year-Old's Funeral Sparks Outrage (ABC News)
Rocky Mountain News reporter Berny Morson covered the Wednesday funeral of Marten Kudlis, who died last week when a pickup truck careered into a Baskin Robbins ice cream shop in Aurora, Colo.
But instead of waiting until after the memorial service to publish a story, Morson sent real-time updates from his cell phone to the Rocky Mountain News' Web site using a micro-blogging service called Twitter.
The newspaper's use of the technology in this way has drawn the ire of journalists and bloggers from Colorado to the United Kingdom, who argue that the reporter essentially trivialized the tragedy by providing a play-by-play of the event.
Rocky Mountain New の記者 Berny Morson 氏が、ある少年の葬儀を取材した。この少年、Marten Kudlis 君は、コロラド州オーロラにあった Baskin Robbins のアイスクリーム店にいたところ、ピックアップトラックが突っ込んできて死亡したのである。
問題は Morson 氏が、葬儀が終わって記事が発表される前に、携帯電話と Twitter を使って Rocky Mountain News のウェブサイト上でリアルタイムのレポートを行ったことである。
新聞がこのような形でテクノロジーを使ったことについて、ジャーナリストやブロガー達から怒りの声があがっている。葬儀の実況中継を行うことで、この記者が悲劇を矮小化したというのだ。
とのこと。この記事を読んで最初に頭に浮かんだのは、例の秋葉原で起きた無差別殺傷事件と、それをネット上でレポートする人がいたことに対しての賛否両論でした(参考記事)。秋葉原の事件で実況したのは一般人で、コロラドの事件で実況したのは新聞記者という違いはありますが、犠牲者を前にした出来事で「実況中継」という行為が許されるのかどうか、という点で性質が近いように思います(念のために書いておくと、葬儀の取材と報道については、少年の両親が許可を与えていたとのこと。その中で Twitter による配信が想定されていたかどうかは不明)。
感覚論で恐縮ですが、個人的にも「事故で亡くなった幼い子供の葬儀を Twitter で実況中継する」というのは、非常に嫌なものを感じます。地震や火事ではあるまいし、リアルタイムで情報を伝えることに何らかの価値があるとも思えません(他人の好奇心を満たす、という効果以外で)。ただ、「それじゃ葬儀の翌日に、新聞という紙媒体の上に『記事』という形でまとめられていればいいの?何が違うの?」と言われると答えに困るでしょう。Twitter というサービスに「遊び」のイメージがあるから問題になった、という面もあるでしょうし、どこまでが許されるべきかという線引きは非常に難しいと思います。
"Now, with digital technology, we have all these tools and methods -- various forms of blogs, RSS feeds, Twitter and other forms of text communication," said Robert M. Steele, a visiting professor at DePauw University in Greencastle, Ind., and journalism values scholar at the Poynter Institute in St. Petersburg Fla. "And there is a tendency and a danger to run headlong into the arena of news events with these new tools.
"And that headlong rush, whether it's well-intended or skewed by business interests, can be disastrous." he added.
インディアナ州 Greencastle にある、DePauw 大学の客員教授であり、フロリダ州 St. Petersburg の Poynter Institute でジャーナリズムの研究を行っている Robert M. Steele 氏は、「テクノロジーの発達により、ブログ、RSSフィード、Twitter、そして他のテキストコミュニケーションなど、いまや私たちは様々なツールを手にしている。そしてそういったツールを手にした状態で、ニュースの現場に頭から突っ込んでしまう危険が生まれているのだ」と述べている。
「十分に考え抜かれた上での行動か、はたまた商売上の利益を追求するための行動かは別にして、ツールを手にして現場に突っ込むことは、悲惨な結末を迎えることにもなりかねない」と彼は追加した。
シロクマ日報でも書きましたが、この警告はジャーナリストに対してだけでなく、私たち一般人にも向けられるべきでしょう。新しいテクノロジーを使って事件を報じることは、それに対する社会的合意が明確な形で存在しない以上、どんな意図で行われたものであっても非難されるリスクを含むものだと思います。その非難に耐え、事件とは別の部分で議論に巻き込まれることを覚悟した上でないと、事件を報じるということに手を出してはいけないのでしょうね。
< 追記 >
時間がなくて発端となった Twitter が探せていなかったのですが、どうも次のアカウントのようです:
ただし検索でヒットしただけですので、裏が取れているわけではないということだけご容赦下さい。これを見る限り、具体的な事実の記述に徹しているだけのようですが……。
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