ということで。昨夜、ではなくて一昨日の晩になってしましましたが、AMNさんのイベント「Wire Free Gadgets Network ブロガーミーティング」に参加して参りました。
■ 「Wire Free Gadgets Networkブロガーミーティング」にご参加頂き、ありがとうございました。 (アジャイルメディア・ネットワーク)
NTTコミュニケーションズさんの内部で社内ベンチャー的に取り組まれている新サービス(の卵)、「Wire Free Gadgets Network」(以下 WFGN)についてご解説いただき、それでどんなことができるか皆で考えようというイベントでした。WFGN ってどんな技術?という点についてはどなたか詳しい方が書いてくれると信じて、僕はとりあえず「機械同士がチャットするのを可能にするネットワーク」と理解しています。
イメージを抱いてもらうには、当日行われたデモを説明するのが手っ取り早いでしょう。前回のエントリでご説明した通り、会場には Eye-Fi を搭載したデジカメが用意されていたのですが、これで写真を撮影した瞬間に Flickr に画像が送られていました。実際に送られたアカウントがこちら:
■ wirefreegadgets' photostream
今となっては信じてもらうしかないのですが、これらは全て、デジカメのシャッターを切っただけでアップされたものです。いったんPCにデータを持っていって、ネットにつないで、Flickr にサインインして……などという操作は一切行っていません。同様に、デジカメのシャッターを切るだけで、各テーブルに用意された chumby や mylo の画面上に写真が表示されるというデモも行われていました。
このように、ある端末から送られたデータを、対象となる端末に直接プッシュ型で配信できる技術と言ったらよいでしょうか。実際には受信側の端末を個別に指定しているわけではなく、チャンネルを個々に設け、受信/送信側がそれぞれ特定のチャネルとデータをやり取りするという仕組みのようですが。しかし表面上は、デジカメと Flickr/デジカメと chumby があたかも直接やり取りしているように感じられます。実際、一般ユーザーには機械同士が会話しているように感じてもらった方が、サービスのイメージが湧きやすいでしょう(電子メールを実際の郵便に喩えるのは厳密には間違いだけれど、実現される現象が想像しやすくなるように)。
さて。この技術を使えば「デジカメで撮った孫の写真を、遠い田舎に住むおじいちゃんのデジタルフォトフレームに表示させる」「(撮った瞬間に Flickr に保存されるので)メディアの容量を気にせずデジカメを撮りまくる」「いま iPod で聴いている音楽を、遠く離れた場所にいる恋人と一緒に聴く(著作権の問題は置いといて)」など、ちょっと考えただけでも様々な新しいサービスが出てきそうです。しかしよく考えると、いまでも「田舎のおじいちゃんに孫の写真(デジタルもしくはプリントアウトしたもの)を送る」ということは普通に行われていますし、メディアはどれも大容量化して「肝心な時に撮れない!」ということはあまり起きなくなりました。遠距離恋愛中のカップルがWEBカムを通じて会う、というのも一般的、とまでは言えないまでも珍しい話ではありません。よく考えてみれば、機械と機械の間に人間が立っていれば、WFGN を待たずとも何でもできてしまうわけですから――機械同士がやり取りできるようになることにお金を払おうとするのは、いったいどんな人々でしょうか?
もちろん企業がサービスのために無料で提供したり、広告モデルで提供するという場合も考えられます。それはひとまず置いておくとして、個人的に「お金が払われそうだな」と思うのは、セキュリティが関連してくるケースです。理由は簡単で、「機械の間に立って両者をつなぐはずの誰かが、何らかの理由で機械の操作を拒んだり、操作できなくなっている場合」だから。例えば、これはいしたにまさきさんのアイデアだったのですが、犬や猫、痴呆症で徘徊癖のある老人などに付けて、リアルタイムで居場所を監視/周囲の人々にメッセージを送れる(スピーカーなどを通じて)デバイスとか。それを発展させて、装着者の健康状態を逐一モニタリングし、発作等で倒れたときには自動的に位置情報を病院に通知するとか(これは既に医療関係で実現されつつあるアイデアですね)。あるいは子供のケータイで撮影された写真が、逐一親のケータイに送られてくるサービスとか。後者は子供にとっては頭にくるようなサービスですが、例のフィルタリング騒動を見ていると、この種のサービスを望む親は多いと思います。
もちろん「愛する恋人同士が、離れていてもお互いを身近に感じるようなデバイス」というのもロマンチックでいいのですが。しかし最初からつながろうとしている人々は、今でも様々な障害を乗り越えているのでは、と思います。「月額3,000円で少し障害が下がりますよ」と言われても、なかなか払う人は増えないのではないでしょうか(もちろんWFGNが普及して利用料が安くなり、毎月微々たる額で使えるようになれば話は別ですが)。それよりも最初の利用者になってくれるのは、上記の通り「機械同士が自動的に会話してくれないといけないケース」に立たされている人達なのかなと感じた次第でした。
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しかし課金については、こんな単純な話では終わらないのでしょうね。例えば「撮影した瞬間に Flickr にアップできるデジカメ」という単純なケースで考えた場合でも、月に10枚しか撮影しない人と、1,000枚撮影する人では料金に差を付けた方が良いでしょうから、契約者がデータをどれだけWFGNの中に流したか把握しなければなりません。またそのデジカメを別のWFGNの契約者に貸し、借りた人が自分の Flickr アカウントにアップしたいとしたら。ケータイの機種変更のように、新しいデジカメに変えたり、複数のデジカメから同じアカウントにアップしたいとしたら。機械と機械、あるいは機械とウェブサービスが直接やり取りできるようになるというのは、様々な料金や課金の形が生まれてくることを意味するはずです。中にはアダルト系のコンテンツを配信しようという企業も出てくるだろうし……などとカオス気味に思考を発散しているうちに、なんとなくNTTコムさんがその辺の面倒な処理を一気に引き受けて、WFGNが「第2のiモード」的に独立した存在になっていく可能性もあるのかな、と感じてみたり。ちょっと違うか。
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