あらゆるサービスに広告を付け、無料で提供してしまうというモデル。Google がお得意としている手法ですが、そのうち病院に広告スペースを出して、診察を無料で行う「Google 病院」ができるに違いない……と思っていたら、既に日本で始まっていたよという話:
■ NPOのアンケート回答→無料診察 札幌の歯科医院波紋 (asahi.com)
札幌市内に、「NPO法人のアンケートに答えれば診察料は無料」という歯科医院が登場したというニュース。ただし対象となるのはこのNPO法人の会員のみで、会員になるには「健康保険証を持っていて年収520万円以下であること」が条件になっているそうですが、実際にこれまで3,000人の患者が無料で診察を受けたとのこと(ちなみにNPO法人の会員数は現在6,000人)。
しかしタイトルに「波紋」とあるように、このシステムが違法となる可能性があるそうです。健康保険法では「診察料の割引で患者を集める」というのは違法になるらしく、歯科とNPO法人が一体であると見なされるとアウト。で、このNPO法人の理事長が、歯科医院を経営する医療法人の理事長代行も兼ねていて、歯科医院もNPO法人の事務所と同じビルのフロアにあると。
朝日の記事では具体的な法人名、院名が出ていなかったので検索してみたところ、J-CAST でこんな記事が:
■ アンケートに答えるだけで 「歯の治療費タダ」で大騒ぎ (J-CAST)
記事の日付は昨年12月4日ですから、だいぶ前から騒ぎにはなっていたのですね。J-CAST の記事によればこのNPO法人は「CMケア機構」といい、上記の仕組みがもう少し詳細に解説されています:
このNPO法人は「CMケア機構」という。医療関連のセーフティーネットを構築することを目的に05年に設立されたのだそうだ。歯科診療の自己負担金をゼロにするためには、まず、同社の会員となり、アンケートに答えることが必要。入会費も会費も無料だが、年収が520万円以下で健康保険証を持っていることが条件になる。このアンケートに答えることで「報酬金」が発生。それが治療費になる。治療期間は1年以内で、通院が重なって治療費が多くなれば、別のアンケートに答えなければならない。
アンケートの内容は、NPO法人が作ったこの仕組みに関する感想や、歯科医院・医師に対する意見、経済動向調査といった簡単なものだという。運営資金はどこから出ているのかというと、発行する広報誌の広告収入、提携先の歯科医院から得られる紹介料的な収入など。提携している歯科医院は現在2 つ。この仕組みをスタートさせたのは07年6月からで、会員は現在6000人。平均年齢は57.6歳。その半数が歯科医院に通ったという。
とのこと。また「行政当局とも協議、法律に反していないことを確認し1年半を費やして作った」そうですから、安易な考えで始めたサービスではないようですが……ただこんな報道もあります:
■ 新会員勧誘に“報酬” 窓口負担ゼロの歯科診療 (MSN産経ニュース)
ケア機構の説明では、現会員が友人らを勧誘し新規会員を15人程度増やした場合、新規会員が受診した際に医院が受け取る診療報酬の7%に相当する金額を、「会員開発費」として勧誘した現会員に支払っている。
ということですから、マルチっぽい話になる可能性もあるようですね。既に昨年12月の段階から行政当局が調査に動いているようですが、今日の朝日の記事ではその後の展開も書かれていませんし、いったいどんな判断になるのでしょうか。
このケースはさておき、医療行為の提供者とお金の出所が一緒でなければ良いのなら、例えば
- 病院にデジタルサイネージを設置
- Google が広告を出稿
- 病院に訪れた患者が広告を見る
- 広告を見たことを何らかの形で把握、相応の費用を診察費から引く
みたいな仕組みならOKと見なされるのでしょうか。ステップ4が難しそうですが、既に視聴者の顔を認識する屋外広告が登場しているくらいですから、技術的には不可能ではないでしょう。あるいはもっと簡単に、診察費の明細に広告を印刷しちゃうとかね(その場合、患者の症状に応じた広告が出るとか……さすがにこれは「プライバシー侵害だ!」という声が出そうですが)。
いずれにしても、法制度が技術のスピードに追いついていないのは明らか。ここでキチンと判断をつけておかないと、ますます予想外のモデルが登場してしまうかもしれません。
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