■ 月に20万稼ぐ方法…ねぇ…うーむ (okky の日記)
を読んで、若干的外れな横やりを。
さて。まずは。月20万というと年間240万だ。そのサイズのマーケットはあるのか?なにしろ不景気だと世の中無駄にやかましい。
たぶん、ある。
「革新的ソフトウェア企業の作り方」に書いてあることだが、大企業は大勢の人間を食わせていく必要があるのでマーケットサイズがある程度以上大きくないと商売できない。一人10万円で合計20人しかお客がいない市場は、大手企業には手が出せないのだ。大手企業が手を出せるのは一人1万円で合計10万人のお客がいるような市場。少人数しかお客様がおらず、一方で大金持ち(一人から取れるお金が超大規模)なわけでもないような市場は、一杯あるはずなのだ。
この部分を読んで、ちょうど読み終えたばかりの『生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則 』を連想しました(先日この本を紹介した時のエントリはこちら)。生物を企業、彼らが住む環境を企業がターゲットとしている市場だとして、以下の文を読んでみて下さい:
フラクタルの考え方は、虫の視点、あるいはクロウタドリやヌーや草の種の視点から自然界にある資源を見ることを可能にする。フラクタルの特徴のひとつは、尺度を細かくすると、細部が見えてきて、輪郭線がより長くなるところにある。小さな種は小さなメジャーを持っているので、より多くの資源を見つけることができる。森の池は、通りがかりのクマにとっては水飲み場にすぎないが、ビーバーにとっては家となり、単細胞の藻類にとっては宇宙となるのだ。この縮尺によって変化する視界は、ある資源のなかにどれほどの食料が得られるかということにもあてはまる。キリンは木の葉をまるごと食べ、固くて消化できない食物繊維もおかまいなしに飲み込んでいく。一方、葉脈のあいだに入り込む草食昆虫は栄養のある葉肉だけを食べ、筋の部分は残す。自然のなかにどれだけのものを見るかは、どれだけ対象に近づくかによって決まり、それは自分のサイズに左右される。
アナロジーだけで全てを解釈しようと思うのは危険ですが、自分のサイズによって見えてくる世界が違うという点はビジネスも生物も同じかもしれません。大企業は大量の食料=収入を得なければいけませんから、自ずと大規模案件に注力するようになります。しかしひとたび組織の思考を離れ、個人として世界を見てみれば、okky さんが言うように「生きていくのに十分なサイズのマーケット」は意外に見つかるのではないでしょうか。
しかしアナロジーで考えることをもう少し許してもらえば、「小さな世界」は非常に危険な空間です。『生き物たちは~』ではミクロレベルの世界が相対的に不安定で、何らかの要因で一瞬にして消えてしまうことも多々あり、種の絶滅もより頻繁に起きていることが指摘されています。例えば上記の例で言えば、異常気象で森の池が干上がってしまった場合「通りすがりのクマ」は少し喉の渇きを我慢するだけでOKなのが、ビーバーは新しい家を探さねばならなくなり、微生物に至っては死を覚悟するしかないわけですね。さらに小さいサイズの生物にとっては、こんな制約もあります:
サイズが重要なのは、生物は、かりに動物だとすれば、どれだけの食物を必要とし、食べないままどれだけ長く移動できるかがそれによって決まるからだ。大きな動物はより多くの食物を必要とするが、食事と食事のあいだがあいても平気なので、広くて資源がまばらな区画を活用できる。小さな動物は食べる量は少なくてすむが、食料は一箇所にまとまっていなければならない。
これを企業に置き換えてみれば、「大企業は大市場を必要とするけれど、国内市場がダメならば海外市場にチャンスをかけることができる」のが、個人では依存している「小さな市場」が干上がってしまったら次の市場を見つけるまでにギブアップしてしまう可能性が非常に高い、といったところでしょうか。いずれにせよ、個人がニッチで生きていこうとするならば、市場の変動性と点在性に対して何らかの手を打っておかなければならないのだと思います。
例えば:
■ 変動を上回るスピードで進化する
小さいサイズの生き物は、相対的に速いスピードで進化するそうです。良い例が細菌やウィルスで、人間が作り出す薬や治療法への耐性をあっという間に身につけて、しぶとく生き残っていくわけですね。個人が自分だけの力で変化を続けることは大変だと思いますが、逆に組織内にいる方が「組織の方針」で古いやり方を強いられるということがあるでしょう。「ピンチはチャンス」という格言は、小さい存在の方に味方する言葉かもしれません。
■ 複数の環境で生きて行けるようにする
また上記の森の例で言えば、微生物として小さな池に依存しているのは致命的だけれど、ビーバー程度のサイズであれば池が干上がっても命取りにはならない、といったところでしょうか。そもそも前提が「個人で働く」という話なので解決策にはならないかもしれませんが、例えば個人でも利用できる秘書サービス等を利用して、できる限りサイズを大きくしておくという対策が考えられるかもしれません。また得意分野が異なる人々(できれば「この職業が活況のときはこの職業が不況」のような表裏の関係になる人々)とパートナーを組み、リスクヘッジしておくといった道も考えられるでしょう。
■ 点在する市場をつなぐ
微生物であれば、小さな池を寄せ集めて干上がるリスクを減らす、などということはできません。しかしビジネスの話ならば、何らかの形で市場を束にする可能性を探ることができるでしょう。最も良い例はネットの活用で、これは説明するまでもありませんが、ICT技術により「フラット化した世界」が既に登場しています。言葉の壁という問題はありますが、逆にそこさえ乗り越えることができれば、世界中のニッチな市場をまとめて儲けを維持することができると思います。さらに最近では App Store のように、個人でも簡単に世界を相手にできるプラットフォームが整備されつつありますから、「言葉は後で身につければ良い」的な割り切りで世界に目を向けてみることが道を拓くのではないでしょうか。
……などなど。他にもいろいろな対策を考えなければならないと思いますが、「この不況をどう凌ぐか」「首を切られないようにするには」的な受け身的な発想でいるよりも、「何とかこの機会に打って出れないか」と攻撃的になってみるのは大切なことだと思います。いきなり起業、とかいう話ではなく、ごく小さなレベルの視点から考えてみるのも思いがけないチャンスを生むのではないでしょうか。
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