というわけで、昨夜は「政治と Twitter」ネタが盛り上がったわけですが、ITが進出すべきは政治(立法)の分野だけではありません。日常生活でより身近なのは、行政の世界でしょう。行政組織が抱える様々な公共データを活用できれば、きっとユニークなアプリケーションが開発できるはず――そんな思いを抱いている方々にとっては、羨ましくなるようなコンテストが米ニューヨーク市で開催されています:
■ New York City Starts Contest for Big Apple Apps (New York Times)
ニューヨークの愛称の1つが"Big Apple"だということをご存知の方は多いと思いますが、それをもじって"NYC Big Apps"という名前がコンテストに付けられています。いったいどのようなイベントかというと:
In an effort to improve government transparency and accountability and stimulate development of the digital media industry, New York City is inviting software developers and related professionals this fall to develop applications to help Internet users navigate vast stores of data in areas like citywide events, property sales, recreational centers and restaurant inspections.
In what is planned to become an annual competition known as NYC Big Apps, the city will make available about 80 data sets from 32 city agencies and commissions. The winners of the competition will get a cash prize, recognition at a dinner with the mayor, and marketing opportunities.
いまニューヨーク市では、行政機関の透明性の向上と説明責任の遂行、ならびに地域のデジタルメディア産業の振興を目的として、ソフトウェア開発者たちにアプリケーションの開発を呼びかけている。例えばインターネット上で、地域のイベント情報や不動産情報、リクリエーションセンターやレストランの衛生検査結果情報などを検索することを可能にするアプリである。
このイベントは"NYC Big Apps"コンペとして毎年開催されることが計画されている。そこでは32の関連機関から80種類のデータが提供され、勝利者には賞金、市長との夕食会、PRの機会などといった報酬が与えられる。
おぉ、なかなか面白そうではないですか。Twitter の成功を引き合いに出すまでもなく、「データをどう処理して、どうユーザーに見せるか」というのはデータの所有者が考えなくても良い話です。外部にお任せしてしまった方が上手く行く場合がありますし、思いもよらなかったアイデアが出てくる可能性もあるでしょう(Twitter の創業者たちがデータを囲い込んでいたら、決して TweetDeck は生まれてこなかったはず)。さらにデジタル産業の育成にもつながるとすれば、ニューヨーク市当局にとっては二度三度おいしい話になると思います。
実は現在米国政府のCIOを務めるヴィヴェック・クンドラ氏も、ワシントンD.C.のCTO時代に同様のコンテストを開催しています:
もしかしたらニューヨークのブルームバーグ市長も、彼の行動を参考にしたのかもしれません。同じようなコンテストを開催することが、米国の大都市で流行になったりして?日本でも例えば渋谷区が「アプリ祭り」を開く、なんてことになれば面白いのに。
ちなみにニューヨーク市ですが、以下のような取り組みも発表しているとのこと:
The mayor also announced the start of 311 Online — a one-stop, searchable Web portal on NYC.gov for thousands of New York City services — and said that the city would establish Skype and Twitter accounts for the 311 city services hot line.
Finally, the mayor said the city would work with Google to “use Google search patterns to better understand the usage of NYC.gov and ultimately improve site content.”
また市長は、"311 Online"(NYC.gov 内に設けられ、ニューヨーク市の関連機関について検索できるポータルサイト)を開設することも発表し、さらに311ホットライン用に Skype と Twitter のアカウントを開設する予定であると述べた。
最後に市長は、Google と協力し、「Google 上での検索行動データを活用して NYC.gov がどう使われているかを解析し、コンテンツの改善を行う」と述べた。
ちなみに文中で"311 city service hot line"というものが登場しますが、これは行政に関する一般的な苦情を受け付ける電話番号として、ニューヨーク市が設置しているもの。実は警察に電話をして苦情を言う市民が多く、警察の活動に支障をきたしてしまうため、911番(米国で110番に相当する番号)ならぬ311番を設けたという背景があります(そしてそこに集まる情報で行政サービスの向上が図られている、という話を以前どっかで読んだような)。で、この窓口に Skype からも通話可能にし、さらに Twitter で情報発信をすると(ちなみに Twitter アカウントはこちら)。米国では行政機関が Twitter アカウントを開設するというケースが(サンフランシスコ市などで)既に存在していますが、「市民への窓口としての Twitter」が定着しつつあるのかもしれません。うらやましい。
というわけで、政治家と同じかそれ以上に、行政機関のITリテラシー向上も進んでいって欲しいと願う次第です。日本の自治体で Twitter などを活用している事例って、どこかで報道されてましたっけ?
それからちょうど TechCrunch に、こんな記事が掲載されていました:
■ オバマのオープンな政府は悪用に対して無防備か? (TechCrunch Japan)
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