「ビジネスブログはメリットもあるが、デメリットも大きい」ということは、ブログに関心を持たれている方にはもう言うまでもないでしょう。しかしメリットについては多くの解説がある反面、デメリットについては詳しい解説が少ないのではないでしょうか。先日のRough Typeで、デメリットの1つである法的リスクについての分類がされていました:
Lame, but smart (Rough Type)
記事をご覧いただければ分かりますが、もともとこちらの記事で解説されていたようです:
Corporate Blogging: Seize the Opportunity, but Control the Risks (Howard Rice Alert)
簡単にその分類を翻訳すると、以下のようになります(法律は詳しくないので、翻訳間違いがあれば指摘して下さい):
- 名誉毀損とプライバシー侵害(第3者の名誉を傷つけたり、プライバシーに関する事柄を書く)
- 知的所有権の侵害(第3者が知的所有権を持つコンテンツを掲載する)
- 取引物誹毀(競争相手の商品/サービスについて虚偽の情報を掲載し、相手に損害を与える)
- 企業秘密(企業秘密に属する事項を書く)
- 証券詐欺(風説の流布など、虚偽の報告により株価に影響を与える)
- ガン・ジャンピング(Gun-Jumping、証券公募の際、届出前に証券の売付・買付またその申し込みを行うこと。ブログで業績を誇大に宣伝した場合、禁じられている売込み行為と見なされるという意味?)
- 選別開示(特定の相手に優先的に情報を開示する)
- 誤解を招く業績見通し(業績見通しを掲載する場合、適切な警告文がないと、誤解を招くものとして規制の対象となる)
- 雇用問題(ビジネスブログに不適切なコンテンツを掲載した社員がいた場合、彼らを解雇すると不当解雇として訴えられる恐れがある。また団結権や言論の自由に対する侵害で訴えられる可能性も)
- 個人情報保護(ブログを訪れた一般ユーザーの情報、彼らが書き込んだコメントなどを保管している場合、それらを個人情報保護関連法規制に従う形で扱うことが求められる)
- 証拠開示手続き(ブログの過去エントリが適切にアーカイブされていないと、証拠開示手続き違反と見なされる可能性がある)
こうしてリスト化すると、意外にブログが持つ潜在的リスクは大きいと実感します。新しく登場した「ブログ」というメディアに対して法整備が遅れているために、グレーゾーンが拡大しているといった状況なのではないでしょうか。上の表はアメリカの法制度から見たリスクですが、日本でも同様の状況なのではないかと思います。
しかし法整備や業界団体によるルールづくりなどを待っていては、ブログの持つメリットを享受できないということも事実です。ブログが抱えている法的リスクを明確に認識した上で(場合によってはNicholas Carrの言うように弁護士の援助を求めた上で)、メリットを最大化するようなスタイルを模索するしかないのではないでしょうか。この辺は、ビジネスブログは果たして「企業という法人が主体となる情報メディア」なのか「社員という個人が主体となる情報メディア」なのかというもっと大きなテーマにつながっていると思います。
ビジネスブログというボキャブラリは、確かに曖昧?かもしれませんね。
http://www.businessblog.jp/b_bblog.html
この定義も一般にあてはまる感じではないですよね。
さて、ここで指摘されたリスクはたしかに留意する必要がありますよね。潜在的なリスクとしてはさらにたくさんあると思います。(更新が滞ることによって発生するブランドイメージの毀損など)
ただ、かなり公法的な利用として一般化しつつあり、個人的には歓迎したいムーブメントです。そもそも、このへんのリスクって、企業がHP(本来の意味でのホームページですね。)を持つときにも、議論されたことなんでしょうね。内容が多様化や発行時のチェックが簡易化することにより発生するあらたなリスクも多いわけですが、根っこは同じのような気もします。
あと、ものすごく瑣末なことですが、Intellectual Property は「知的財産権」の方が一般的なような気がします。(知的所有権とも言うのですが、特許庁は知的財産権という表現をしていますので)
もひとつ、Selective Disclosure は「選択的開示」の方がいいかも?
投稿情報: p-article | 2006/03/30 11:42