製品/サービス向上のために、ユーザー側からフィードバックを得る -- という作業をされた方なら誰でも、それがいかに難しいことかは身に染みてお分かりだと思います。問題の1つは、回答者が本音や本心を明かしてくれない(無意識か意図的かどうかを問わず)という点だと思いますが、これについて10個のアドバイスを掲げたエントリがありました:
■ When Observing Users Is Not Enough: 10 Guidelines for Getting More Out of Users’ Verbal Comments (UXmatters)
著者の Isabelle Peyrichoux さんは心理療法(サイコセラピー)を学んだことがあるとのことで、回答者の心理面から正しい情報を引き出すアドバイスを挙げてくれています。以下、ほんとーに抜粋&意訳しまくりでまとめたもの:
- 自分の勝手な判断や偏見に気をつけること。例えば、回答者のコメントに対し「良いですね」などの言葉で反応してしまうと、相手は自分の発言の良し悪しについて気にするようになってしまう(その代わり「分かりました」などの言葉を使うこと)。
- 誠実で、オープンな態度を取ること。自分が誠実になれば、相手も誠実な態度で臨んでくれる。
- 自分に合わせてもらうな。自分も相手に合わせるようにすること。相手のコミュニケーションの仕方に合わせないと、大切な情報を失うことになる。
- 相手が自分にどう対応しようとしているのかをつかむこと。「質問者の気分を害したくない」という心境から、嘘をつく回答者もいる。
- 回答者自身の経験を語らせるようにすること。「僕は大丈夫だけど、年寄りには難しいかな」など、回答者が他者の意見を想像して口にすることがよくある。それは何か言い出しにくいことがあるからであり、発言の裏にある真意を探ること。
(例)
回答者: 僕は大丈夫だけど、普通の人は難しいんじゃないかな。
質問者: あなたは大丈夫なんですね。
回答者: 大丈夫だよ、っていうのは・・・(理由を述べてもらう) - 回答者自身が発言内容を検閲している場合を察知し、本当の意見を引き出すようにすること。
(例)
質問者: このサイトの印象はどうですか?
回答者: 複雑すぎるかなぁ。けどこの分野に詳しい人なら、大丈夫かな。
質問者: あたなたは複雑だと思うんですね?
回答者: はい。というのも・・・(理由を述べてもらう) - 解決策ではなく、問題点を語らせるようにすること。例えば「ここのリンクは太字にした分かりやすいよ」と言われ、その意見を鵜呑みにしても、うまくいかない場合が多い。そうではなく、「なぜ太字にした方がいいと思ったのか」を把握しないと、問題の解決にはつながらない。「どうすれば良くなると思いますか?」という質問は禁句。
(例)
回答者: このラベルは間違ってるよ。
質問者: どうして間違ってると思うのですか? - 「なぜ?」を繰り返し、深堀りすること。
- 客観的で、正確な観察を行うこと。例えばユーザーが何もせずにいる時、「何か気がひけるのですか?」と聞いてしまうと、それは主観を入れてしまうことになる。そうではなく、「しばらく画面を見つめている時間がありましたが、どうしたのですか?」など客観的な事実のみを語ること。特に言葉以外のコミュニケーション(表情やジェスチャーなど)は質問者が主観で判断し、質問すらしないことがあるので注意。
(例)
質問者: 笑顔ですね。
回答者: ええ、このページにある画像が好きで。 - 質問者のペースで、自由に語らせること。強制が少ないほど、正しい回答が得られる。
以上10個。わかっちゃいるけど、というものも多いですが、原文では様々な例を挙げてくれているので参考になります。時間のある方は、ぜひ原文を読んでみて下さい。
自分が気になったのは(1)や(9)の辺り。知らず知らずのうちに主観を押し付けていることって、結構ありますよね。特に非言語コミュニケーションを曲解して、「ああ、この人は笑顔だから操作を難しいとは思っていないな」などと判断してしまい、その(勝手に作り上げた)イメージに沿ってストーリーを作り上げてしまうということがあると思います。さらに回答者がこちらの気分を害すまいと考え、そのストーリーに沿った回答をする……などという事態になると、もう修正がきかなくなってしまうのでしょう。
WEB2.0 時代ということで、どんな分野・どんな業務でもユーザーからのフィードバックを簡単に得られるようになりました。上記のアドバイスは、意外とこれから様々な場面で必要になるものかも知れませんね。
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