悲しいことに、またネットいじめによる自殺者が出てしまいました。それと呼応するかのように、今朝はネット規制法案について自民党と民主党が合意、今国会で成立する見通しというニュースも入ってきています(こちらはフィルタリング導入が主な内容なので、ネットいじめとは直接的に結びついていないのですが)。個人的には、「携帯電話の所持禁止」などといった国による規制はできる限り避けるべきだという立場であることはこれまでも書いてきましたが、いじめや性犯罪など悲惨な事件が続けば、国の規制が入ることは不可避な情勢かもしれません。
実は米国でも事態は同様で、ミズーリ州で「SNS上で架空の少年になりすました49歳の女が、近所に住む13歳の少女を自殺においやる」という事件が起きていたことをご存知の方も多いと思いますが、被害者の母親が法改正を求める運動を続けています:
■ Cyber bullying: From victim to crusader (eSchool News)
子供が犠牲者となった事件の遺族が、事件の再発防止を求めて議会に働きかける――というケースは米国では珍しくありませんが、この事件でも、母親である Tina Meier さんが家族や友人のサポートにより活動団体を設立・学校や親たちの前で講演を行っているとのこと。またいじめにあっている子供を助けた子供に対し、奨学金を提供することも計画中とのこと。親や政治家に働きかけるだけでなく、子供たちにも事件防止に協力してもらおうと考えている点が興味深いところです。
そして連邦議会のレベルでは、ネット上で誰かに悪口を言ったり、脅迫したりすることに刑罰を適応する法案が提出されたそうです:
■ Federal lawmaker targets cyber bullying (eSchool News)
ミズーリ州選出の共和党議員、Kenny Hulshof がネットいじめに刑法を適応することを定めた法案を提出、という記事。米国は日本とは異なり、「法案提出=成立の見込みがある」ということでは必ずしもないので、このニュースが即「米国はネット規制の方向に動いている」ということではないのですが(特にこの議員はミズーリ州知事の座を狙っているとのことで、同州で起きた事件に人々が関心を示している、ということを踏まえた上での行動かもしれません)。また現在も現実世界での嫌がらせ行為は処罰されるわけですから、この法案が成立しなくてもいじめが野放しになるということではないでしょう。ただ「ネット上でのいじめ行為が違法であることを明確にしよう」という動きが出ているわけであり、注視が必要かもしれません。
ちなみにどんな言葉が問題になるかというと、「他人に何かを強要したり、嫌がらせしたり、精神的苦痛を与えたり、他人を脅えさせたりするもの」とのこと。うーん、これだと範囲が広くて、多くの書き込みが規制対象となってしまいそうです。Hulshof 議員はこの法案が言論の自由を妨げるものではない、と主張しているそうですが、例えば政治家が「掲示板の書き込みで嫌な気分になった!誰が書き込んだのか捜査を依頼する!」といったような濫用が怖いところです。また「氏ね」や
た
て
よ
み
のような抜け道(米国に縦読みは無いと思いますが)が生まれて結局は嫌がらせ行為が無くなることはないと思いますが……。
しかしネットいじめの問題に何らかの手を打たなければならないのも事実です。個人的には、規制が合理的なものに止まる一方で、上で出てきたような「子供にも協力を求める」といった啓蒙活動、ネットリテラシーの教育などが並立で行われていくことを期待します。
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