前に以下のエントリを読んでから、ずっと観たかった作品『僕らのミライへ逆回転』。ようやく日本でも公開されたので、昨日観に行ってきました:
■ 段ボールで『2001年宇宙の旅』をリメイクできるか? (ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記)
個人的に最高の恋愛映画として崇拝している(=反論は受け付けません)『エターナルサンシャイン』の監督(ミシェル・ゴンドリー)が撮った映画ということもあり、公開されたら絶対に観に行かなければと思っていたのですが、期待通りの出来映えでした。
***** 例によって以下はネタバレを含むので、ご覧になっていない方はご注意下さい *****
あらすじは情報系サイト等でお読みになった方も多いと思いますが、予告編を貼っておくと:
こんな感じ。事故によって磁気を帯びてしまったジャック・ブラックが、レンタルビデオ店のビデオを全ておしゃかにしてしまう。それをお客にバレないように、モス・デフと一緒にその場しのぎのリメイク版を撮影し始めたら、意外なことにこれが大ヒットして……という話。荒唐無稽な設定で、話の流れもご都合主義でいっぱい(そんなに上手くいかねーだろー!とツッコミたくなる場面多数)なのですが、そんなのはハッキリ言ってどうでもいい部分です。この作品が全編通して訴えてくれるのは、
お金なんてなくても、楽しい映画はつくれて、しかもつくること自体が楽しい!
というメッセージ。さらに個人的には、「映画」という部分を「音楽」や「小説」、「演劇」や「アート」などにも置き換えられると感じています。
物語が進むと、ジャック・ブラックやモス・デフだけでなく様々な人々が映画づくりに参加してくるのですが、ガラクタを集めて映画をつくる人々の楽しそうなこと!もちろん皆演技のはずなのですが、まるでドキュメンタリーを見ているかのように、彼らが楽しんでいる気持ちが伝わってきます。そのせいか、海外では映画公開後にマネをして「スウェーデンする」(※劇中で撮り直した作品を「スウェーデン製のリメイク」と偽り、sweding が「リメイクする」、sweded が「リメイクバージョンの」という意味で使われるようになった)人々が登場。社会現象?となったそうですが、彼らが「オレ達もやってみたい!」と感じた気持ち、よく分かります。
終盤、主人公たちの前にハリウッドの権利者たちが現れ、せっかく成功した Sweded 版の作品達は取り上げられてしまいます(この場面が某国の状況とオーバーラップしていまう……)。しかしモス・デフが最後にある作品のアイデアを思い立ち、皆で協力して「新作」をつくるという流れなのですが、ここからが最高でした。集合知さながらに皆でアイデアを出し合ったり、意外なものでレトロ感を演出したり。エンディングはある程度予想できてしまうとはいえ、繰り返しになりますが、そんなのはどーでもいいこと。作品をつくろうという姿勢こそが、芸術活動を通じて楽しみを生むことにつながるのだ、というメッセージが強く心に響いてきました。
リメイクばかりで新作の少ないハリウッドへの批判、金満超大作へのアンチテーゼ、そして著作権制度への皮肉。様々な社会的メッセージを読み取ることもできるのですが、個人的にはもっと単純に、「何かつくるって面白いよね」とゴンドリー監督は言いたかったように思います(それだけ感じられれば、この作品は十分楽しめるはず)。何しろ監督自ら、この作品の予告編の「スウェーデン版」を作成しているのですから:
そうそう、公式サイトのリンクを載せて置かなければならないのですが、なぜか現時点でダウンしている日本版公式サイトなんかよりも、本家公式サイトの方が必見です:
これまたネタバレ無しで楽しみたいという方は、以下を読まずにまずはアクセスしてみて下さい。
アクセスして"Enter"すると、いきなりインターネット全体が(ジャック・ブラックの磁気で!)消去されてしまいます。そこでこのサイトは仕方なく、以下のような"Sweded Google"を作り上げてしまう、という仕組み:
もちろんジョークなのですが、よく見るとポインタに針金がついている(で、見えないところから誰かが動かしているように見える)など、芸が細かいです。ここでは以下のような、Sweded パッケージの作成も可能:
映画をご覧になった方は、こちらのサイトでも遊んでみて下さい。
……ちなみにジャック・ブラックも「『エターナル・サンシャイン』には完全に打ちのめされたんだ。あれは僕がこれまで見た作品の中で最も素晴らしいものの一本」と語っているそうな(ソースはパンフレット)。その言葉が聞けただけでも、個人的にはこの映画を観に行った甲斐がある(そしてパンフにお金を出した甲斐がある)というもんだ。
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