シロクマ日報でも書いたのですが、ランダムハウス講談社様にいただいた『人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く 』を読了。文句なしに面白い本でした。ただ何ヶ所か分かりづらい(というより僕の頭が追いつかない)部分があったので、関連書籍も含め、再度読み直してみるつもり。しかし細部までしっかりと理解しておきたいと思わせるほど、興味深い議論が詰め込まれた一冊でしたよ。
この本はタイトルの通り、「一見不合理に思える行動でも、裏側には合理的なロジックが潜んでいる」ということを、様々なケースを通じてを解き明かすのがテーマに置かれています。中でも面白かったのが、「中毒ですら合理的な判断の結果である」という議論。タバコやアルコール、ギャンブルなど、世の中には様々なモノに対して中毒に陥ってしまう人々が存在しているのはご存知の通り。そんな中毒患者は「危険なモノの誘惑に勝つことのできない、意志の弱い人々」などと見なされていますが、彼らも合理的な判断を行っている証拠が紹介されています。
例えば面白いのが、「中毒を解決する方法の存在が、中毒を招いている」という主張:
経済学者はさらに、ニコチンパッチ/ガムの広告がタバコを吸っていない10代の少年少女に喫煙を促していると思われることも明らかにしている。10代の青少年が合理的であるとしたら、このことは簡単に説明がつく。こうした広告は、禁煙するのを助ける新しい方法があり、合理的に判断すると喫煙を始めるリスクが低くなっていることを伝えるものであるからだ。ケビン・マーフィーは、この発見は「ごく当たり前」のことで、まったく意外ではなかったと私に話し、こうつづけた。「それでも、証拠によって理論が裏づけられるというのは、いつ見てもいいものだ」
仮に中毒が完全に不合理な行動であれば、中毒の解決策の有無は、中毒患者の数に影響を与えないはずです。もちろん「何があろうがオレは吸う!」という思考回路をしている人もいるのでしょうが、中毒のリスクの変化が利用者数に影響を与えているのであれば、利用者の多くはちゃんとリスクやコストを把握してると考えることができるでしょう。だとすれば、実はニコレットの存在が、禁煙の妨げになっていたりして?
そう考えると、何かを止めたいと考えている人は、それがもたらすリスクやコストを逆に高める方策を取ると良いのかもしれません。例えばダイエットしている人は、「カロリーを消費するための毎朝のジョギング」をあえて止めてしまうとか。そうすると、「もうあんまり食べちゃいけない」という計算が働くようになって、お昼にカツ丼定食を食べるのを回避するようになったりしてね。もちろん「ヘルシア緑茶」や「黒烏龍茶」などといったダイエット飲料を遠ざけることもお忘れ無く。
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