年末年始にゆっくり読もう、と思って買ってきた本『イスラエル人とは何か―ユダヤ人を含み超える真実 』。なにしろ600ページ以上もあるので、暇なときに読み進めるか……と思っていたのですが、悪い意味でタイムリーなことになってしまいました。
■ イスラエルがガザ空爆続行、死者360人以上 ハマスも報復攻撃 (NIKKEI NET)
始めに断っておくと、今回の空爆は決して正当化されるものではありません。というより、どんな争いであったとしても、民間人が殺戮に巻き込まれるのは決して許されないことでしょう。しかし、なぜそんな行為をイスラエル国民の8割が支持するのか。イスラエル人が血も涙もない集団だからだ、と考えている方は、この本を手に取ってみることをお薦めします。
一口に「イスラエル人」と言っても、第2次世界大戦でのユダヤ人弾圧を生き延びてきたような人々(恐らく僕らが一般的にイメージする姿でしょう)だけでなく、ロシアやエチオピアから移住してきた人もいれば、アラブ系の住民もいるという、「多民族国家」としてのイスラエルの姿にまず驚くはず。さらに新旧世代間の意識の差、僕らにはお馴染みの「IT大国」としてのイスラエルの姿、そして最も重要なことだと思いますが、パレスチナ問題やテロ行為を市民がどのように捉えているのか等々が描かれます。当然のことなのですが、イスラエルといっても日夜戦争に明け暮れているわけではなく、多種多様な人々がそれぞれの人生を送っていることが分かるでしょう。
重ねて言いますが、だからと言ってパレスチナ人弾圧が許されるわけではありません。しかし、その行為の裏側にはどんな感情があるか、どんな議論が行われているかを理解しておくことは決してマイナスではないと思います。むしろ彼らを悪魔か何かのように捉え、「とにかくお前らが悪いんだ」的な非難に徹するよりも建設的な議論が行えるのではないでしょうか。ただそういう人々にとっては、あらゆる冷静な議論が「ユダヤのプロパガンダだ!」となってしまうのでしょうが……。
蛇足気味に、今回の空爆の裏側にある論理を、イスラエルの側から説明した記事を紹介しておきたいと思います:
■ Why Israel Feels Threatened (New York Times)
イスラエル(イスラエル国内のユダヤ人勢力)がこれまでにない危機感を感じている理由が、以下の3つにまとめられています:
- 周辺のアラブ/イスラム諸国が、いまだにイスラエルという国の合法性を認めていない。
- パレスチナ人の処遇を巡り、西側の世論がイスラエル支持から離れていってしまっている。
- 東にはイラン(核開発を進行中)、北にはレバノンのヒズボラ、南にはハマス、そしてイスラエル国内にはアラブ人勢力(2040年から50年までにイスラエル国民のマジョリティになると予測されている)と、敵対的な勢力が具体的な姿となって現れている。
要はイスラエル国民の目には、四面楚歌のような状況になりつつあると写っているのでしょう。くどいようですがだからパレスチナ人を殺して良いというわけではありません。しかし国際的な非難を浴びようと、彼らが追い求めようとしているものは何なのか、それを理解する必要があると思います。
「どちらが好きか/嫌いか」という感情は抜きにして、あらゆる争い事は、両者の目を通して見てみなければならない――そうしなければ、単純な抗議はむしろ戦いを長期化させるだけなのではないでしょうか。
とても参考になりました。今後も情報発信を期待いたします。
投稿情報: チョク | 2009/01/01 14:08