まったく関心を持ってくれない人に、無理やり注意を向けさせる。広告が威力を発揮する領域ですが、ウザがられてしまうことも少なくありません。しかしこんな目的のためなら、広告の正しい使い方と言えるかもしれません:
■ Roche "Anti-Stress Balls" (directdaily)
ヘルスケア企業のロシュがポルトガルで展開したキャンペーンについて。一見するとストレスボール(よく企業がノベルティとして配布する、ゴムのように弾力があるボールです)のようなものを街頭で配布していますね:
このストレスボール(のようなもの)、当然ながら「ぎゅっと握りしめてストレス発散してもらう」という普通の目的のために配布されたわけではありません。それどころか、中には小石のような固い物質が入っていて、握るとそれを感じるようになっています。実はこれ、女性に乳ガンの危険を呼びかけるもので、よく言われる「乳房を触ったときにしこりのようなものを感じる」という状態をシミュレートするのが目的とのこと。もちろんボールを配って終わり、というわけではなく、乳ガンをチェックする方法を記したカードも一緒に配布して早期健診を呼びかけたそうです。
「触ってしこりがあるかどうか」と言われても、実際の乳ガンを触診した経験などない人がほとんどですから、なかなか具体的な行動には結びつきにくいでしょう。しかしこういった形でバーチャルな現実、特に「触覚現実」とでも言うべきものを再現してくれれば、少しでも正しい判断が行える可能性が高まるはずです。手に触れることのできない情報を、手に触れられる状態にして伝えてみる。時にはそんな工夫をすることを検討してみることが必要なのかもしれません。
コメント