人間の心は合理的にできているようで、実は非常に不合理にできている――というのは昨年流行した行動経済学などでも繰り返し指摘されている点ですが、また面白い心理実験が行われました。今回のテーマは「姿勢は心理状態を左右するか」:
■ The power of posture (The Economist)
ノースウェスタン大学の研究者らが行った実験結果について。被験者は77名の学部生で、彼らの権力意識や行動力が「姿勢」という要素にどの程度影響されるかが試されたとのこと。
実験内容はこんな感じ。まず学生達は、リーダーシップを計測するためのアンケートに回答するように求められます。その結果に基づき、次の実験において半数が上司役を、残りが部下役を演じるように求められるのですが、実はアンケートはまったくのデタラメ。「(その人が持つ能力ではなく)与えられた肩書きが権力意識にどう影響するか」を計るための処置なわけですね。
また最初のアンケートと、次の実験が行われるまでの間、つまりアンケートの結果発表を待っている間に、学生達は別の作業をするように指示されています。「イスのマーケティング調査」と称し、半数の学生には縮こまった姿勢で座ることが、残りには足を開いた(いかにも偉そうな)開放的な姿勢で座ることが求められたとのこと(時間は3~5分間)。これで「姿勢」に関しても比較可能な材料が揃ったわけですね。
これらの用意ができたところで、学生達には単語の穴埋めテストが実施されました。例えば"L_AD"のような単語を見せられて、"LEAD"や"LOAD"のような正しい単語を作るように求められたわけです。で、"LEAD"や"POWER"などのように、リーダーシップや権力を連想するような単語を回答した場合には1ポイントが加算され、その結果が先ほどの対称軸に基づいて考察されたという流れ。
さて、だいたい結果は予想できていると思いますが――なんと!偉そうな姿勢を取った学生達の平均ポイントが3.44だったのに対し、縮こまった姿勢を取った学生の場合は、平均2.78ポイントだったとのこと。また「議論で口火を切るか」「無実の罪で投獄されている人物の解放運動に参加するか」といった質問に対しても、偉そうな姿勢を取った学生達の方が積極的な態度を示したそうです。さらに与えられた「肩書き」については、結果を左右するような影響は見られなかったのだとか。肩書きは効果無し、という部分についてはちょっと驚きですが、少なくともこの実験ではこんな結果だったとのこと。
うーむ、上司が偉そうなのはそういう性格だからではなく、「偉そうに座っているから」だったのか。ならば重役イスではなくパイプイスにすれば、偉そうな態度も直るのかも……というより社員全員のイスを重役イスにすれば、全員がリーダーシップを発揮するような会社になったりして!?という冗談はさておき、少なくとも普段から姿勢は正しくしておいた方が良さそうですね。
不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」 ダン アリエリー Dan Ariely 櫻井 祐子 早川書房 2010-11-25 売り上げランキング : 2247 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
コメント