あまり「草食化」という言葉は好きではないのですが、マスコミが騒ぎ立てるような変化は日本に限ったことではないよ、という話。全米家族調査(National Survey of Family Growth)の新しい調査結果によると、性交渉を持つ若者が減少傾向にあるとのこと:
■ More Young People Scorning Sex, Study Finds (NPR)
ちなみに元となった調査結果へのリンクはこちら(PDFファイルになります):
ではどのような発見があったのかという話ですが、先ほどのNPR記事の冒頭で、こんな点が紹介されています:
A new federal survey found that 27 percent of young men and 29 percent of young women ages 15 to 24 say they've never had a sexual encounter. That's compared to 2002, when 22 percent of both men and women said they had never had any sort of sex.
米連邦政府の新しい調査結果によると、15歳から24歳までの男性の27パーセント、および同世代の女性の29パーセントがこれまでに性的関係を持ったことがないと回答している。2002年の調査では、この結果は男性・女性両方とも22パーセントだった。
この傾向をどう解釈するか。日本のワイドショーなら恐らく「また一つ草食化の傾向が!」と飛びついていたところのような気がしますが、ここでは以下のようなコメントが取り上げられています:
"I'm impressed with the younger generation," John Santelli, a pediatrician and senior fellow at the Guttmacher Institute, which studies sexual and reproductive health, told Shots. "I see a generation of adolescents who are very concerned about making the right life choices — trying to take care of their health, trying to take care of their responsibilities in school. Perhaps this data reflects that."
小児科医で、グットマッハー研究所(性と生殖に関する健康を研究する民間団体)の上級研究員でもあるJohn Santelli氏は次のように語っている。「若者たちに感心しています。彼らは人生について正しい選択をしようと非常に心がけており、自分自身の健康や、学校での責任といったものに注意を払っています。この結果は、それを反映したものでしょう。」
ドン・タプスコット氏の『デジタルネイティブが世界を変える』でも、若者世代が高い倫理観を持って行動するようになりつつあることが触れられていましたが、Santelli氏のような解釈を行うというのも1つの可能性としてあり得るでしょう(もちろんこの結果だけでは、何が原因となっているのかを導き出すことはできませんが)。
またこの結果は、「草食化」と呼ばれる現象が日本国内の文化に起因するものではなく、先進国の社会構造に起因するものである可能性も示唆しているのではないでしょうか。少子化が進み、相対的に子供一人ひとりにかけられる教育費やケアの時間量が増えたことで、論理的に行動する子供が増えてきたのだといった仮説も考えられると思います(それが良いことなのかどうか、という価値判断は別にして)。全米家族調査の調査が日本でも紹介され、「ワイドショーの面白ネタ」以上の分析が行われるようになってくれると良いのですが。
デジタルネイティブが世界を変える ドン・タプスコット 栗原 潔 翔泳社 2009-05-14 売り上げランキング : 125139 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
コメント