そもそもインターネットは、サイバーカスケードなどという現象を引き起こすように「同じ思想を持つ人々が集まりやすい」という性質を持っているわけですが、特に人と人とのつながりを醸成することが目的であるSNSは、似たような人々の集団を生みやすいと言えるかもしれません。実際、こんな研究結果が報じられています:
■ Social sites reveal class divide (BBC News)
「ソーシャルサイトが格差を浮き彫りにする」という刺激的なタイトルの記事。端的に言ってしまえば、Facebook のユーザーよりも MySpace のユーザーの方が「下流」である傾向が強いという内容です。調査を行ったのは、ブログ"apophenia"でも有名な Danah Boyd さん(U.C. Berkley の博士課程在学中)。ポイントをまとめると以下の通り:
- Facebook と MySpace のユーザーの中から、米国のティーンエイジャーを対象に6ヶ月の調査を行った。
- Facebook のユーザーは裕福な家庭出身で、大学に通っている傾向が強い。
- また Facebook ユーザーは白人で、教育熱心な家庭に育っている傾向が強い。
- 一方 MySpace のユーザーは、高卒で就職している傾向が強い。また両親も大学を出ていないことが多い。
- また MySpace のユーザーには、オタク、変人、同性愛者など、社会的に阻害された人々が多い。
- Facebook、MySpace のユーザー両方とも、自分が「使っていない」SNSについて強固な意見を持っている。(※逆に言えば、今のSNSに「何となく」参加しているのではなく、明確な意思を持って Facebook もしくは MySpace を選んでいるということ?)
Danah さんが警告している通り、SNSは単に既存の格差を写し出しているに過ぎないのかもしれません。また Facebook は大学生が交流するサイトとして、MySpace はより若い人々が自己表現できる場として成功を収めてきた、という歴史的背景も考えなければいけないでしょう。しかし結果として「格差」を強化したり、境遇や傾向の異なる人々の交流を妨げたりすることにはならないのでしょうか。
日本で現在メジャーなSNSといえば、mixi、GREE、モバゲータウンあたりですか。社会格差というよりも、機能(目的)・世代でユーザー分けがされているように感じますね(富裕層SNS、などというものも登場しているようですが)。日本でも今後、意識的にかどうかは別として「格差」がSNSの中に生まれるのかどうか、注目してみてもよいのかなと思います。
はじめまして。
格差とSNS、興味深い記事です。
音楽SNS、ゲームSNSなどSNSの差別化が進んでいますが、
あくまで利用目的別の差別化が主だと思っていました。
学歴や収入の差別化(=格差)がでてきているというのは新しい視点ですね。
投稿情報: こんの | 2007/06/27 15:22
こんのさん、コメントありがとうございます。
言われてみればなるほど、という観点なのですが、日本ではなかなか出てこないですよね。
これが米国特有の現象で終わるのか、日本でも似た傾向が出てくるのか、注目しても面白いと思います。
投稿情報: アキヒト | 2007/06/29 22:43