まずは以下の2つのスローガンをお読み下さい:
- "Live the healthy way, eat five fruits and veggies a day"
(1日に5つの野菜と果物を食べて、健康に暮らそう) - "Each and every dining hall tray, needs five fruits and veggies a day"
(食堂のトレイの上には、1日あたり5つの野菜と果物が載っているように)
さて、どちらの方が優れたスローガンだと思いますか?
これはある実験において、被験者となった大学生たちに提示されたものだそうです。「どちらの方が好きか」という点においては、1.のスローガンの方が勝っていたとのことですが、実際に効果があった(それを見た被験者が、より多くの野菜や果物を食べた)のは -- 何を隠そう、2.だったわけですね。
以上の内容が、MIT Sloan Management Review の記事に載っていました:
■ What You See Affects What You Get (MIT Sloan Management Review, Summer 2007)
「目にしたものによって選択は左右される」というタイトルの記事ですが、文中では他にも「オレンジ色のペンで文章を書いた後には、オレンジ色の商品(オレンジジュースなど)を選んでしまう」といった実験結果が紹介されています。人間は周囲の環境に存在するさまざまなモノを「キュー(cue)」として捉え、それに関連するモノ/行動を選択してしまうため、このような結果になるのだとか。
で、この心理的傾向をどのようにマーケティングに結びつけるか?という考察のために行われたのが冒頭の実験。キャッチコピー的に優れている1.よりも、2.の方が目的とした行動を引き起こした理由、それは「キュー」が含まれているか否かにあります。2.の中にある「食堂のトレイ(dining hall tray)」という言葉がこの場合の「キュー」となり、学食を訪れた学生たちに行動を促した -- 従って消費者に向けたメッセージの中には、何らかの連想をさせる言葉やイメージを含めるべきではないか、という提言がされています。
もっともテレビやラジオ、映画ぐらいしか娯楽のない時代と違い、現代は広告を見てもらうことすら一苦労している時代です。実験のように、無理やりキャッチコピーを読んでもらうというわけにはいかないでしょう。また上記の記事でも指摘されているのですが、「キュー」設定をするためにあまりに見えすいた行動(いまなら「陸上競技を観戦したら、ビールを飲もう!」とか?)を取ると、逆に消費者から反感を買う可能性もあります。「人は見たものに影響される」とは分かっていても、なかなか応用は難しいかもしれません。
しかし社内で何か呼びかける時や、プロジェクトチーム内で特別なルールを徹底させる時などに活用できるテクニックかもしれませんね。例えば「退社時にはキャビネの施錠を行う」というルールを浸透させたい場合、「カバンを持ったらキャビネを確認!」などと書いて目立つ位置に貼っておけば、効果が期待できるかも?
……ということで、勝手ながら「12時になったら Polar Bear Blog!」をスローガンとさせていただきます。このエントリを掲載した後から、劇的にお昼の時間帯のアクセスがアップした!なんてことになったら楽しいのですが。
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