賛否両論ありますが、CAPTCHA には一定のスパム抑止力があると言えるでしょう。しかし視力に障害のある方々のアクセシビリティが保証されないし、様々な迂回方法があるためスパムを完全に防ぐことができないのも事実…ならばせめて CAPTCHA を突破する労力を、人助けに転用してしまおうというアイデアがこちら:
■ Computer Security Can Double As Help For The Blind (ScienceDaily)
UC San Diego の Serge Belongie 教授らによる提言について。Belongie 教授は視覚障害を持つ人々のために、様々なアプリケーションを開発しているそうなのですが、その1つがカメラ付きウェアラブルコンピュータ。これで画像を拾って、そこに何が写っているのかを目の代りに解析する……とここまで言えば、カンの鋭い方はお気づきかもしれませんね。プログラムで画像解析を行うだけでなく、人間の力を借りる、すなわち CAPTCHA と同じ仕掛けで「提示された画像の中に何が写っているのか」を答えてもらう、というアイデアです。
例えば視覚障害者の方がこれを付けて買い物に行き、画像を「これからブログにコメントを付けようとしている人」に送った上で、「ピーナツバターのビンをクリックしてください」とか「私がいま手に持っているものは何ですか」などと尋ねたりすると。うーん、これって確かに人助けになりそうですが、実行性に問題はないのでしょうか?ブログやSNSなどの普及率を思えば、「これからコメントを付けようとしている人」を瞬時に見つけることはできそうですが(このシステムが全国的に導入されたと仮定した上での話)、答えてもらった内容が正しいかどうか、結局別の誰か/プログラムで確認するしかないですよね。入力された文章が意味をなしているかどうか、という程度の確認はできるんだろうけど、人間の言葉でウソをつかれたらどうしようもないし。まぁ助けを求めている障害者を前にして、ウソを教えるような悪人はそんなに多くないと思いたいですが……。
とここまで聞いて、reCAPTCHA の話を思い出された方も多いのではないでしょうか。事実、Serge Belongie 教授らはカーネギーメロン大学の reCAPTCHA プロジェクトメンバーの研究者たちとも協力を行っているそうです。目的が書籍のデジタル化か、視覚障害者の援助かという違いはありますが、CAPTCHA にかける労力を有効利用しようという視点は同じですね。実用化までにはクリアしなければならないハードルが多そうだけど、ぜひ何らかの形で成果が出ることを願っています。
ちなみにこのシステムの名前は"Soylent Grid"というのだそうですが、これは映画"Soylent Green"から名付けられたとのこと。この映画がどんな映画なのかについては、Wikipedia での記述をご覧いただくことにして、こんな遊び心のある姿勢は好きです。本題と関係ないけど。
ご参考までに、CAPTCHA ネタでの関連エントリはこちら:
■ CAPTCHA で利益を生むには? (Polar Bear Blog)
■ 美女が認証システムの代わりに -- hotcaptcha (Polar Bear Blog)
■ Googleも避けられなかった落とし穴 (シロクマ日報)
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