Dove のCMは偽善？

以前もご紹介しましたが（関連記事）、Dove が"evolution"に続いて制作したバイラルビデオ"Onslaught"というものがあります。まずは蛇足となってしまいますが、そちらからどうぞ：

で、そちらをパロディしたのが以下のビデオ。ちょっと事前知識が必要になるのですが、こちらもご覧下さい：

こちらで置き換えられている部分（男性のシャツの臭いを嗅いだ女性がウットリする、大勢の女性が一人の男性に押し寄せる etc.）は、AXE という男性用フレグランスのCMの一部。実は Dove と AXE を作っているのは同じ企業 ― ユニリーバであることを茶化したビデオです（最後に表示されるメッセージも「娘さんに話し掛けて下さい。ユニリーバが話し掛ける前に」に置き換えられています）。つまり「美容業界を批判してるけど、お前の会社も別のとこでこんなCM作ってるじゃないか」ということですね。

AdAge の記事によると、このビデオを制作した Rye Clifton という方は Interpublic Group of Companies 傘下の広告会社、Martin Agency でシニア戦略プランナーをされている方だそうです（つまり同じ業界の人）。ビデオの発案者も彼自身とのこと。彼は Dove と AXE の両方がユニリーバのブランドだということを知らなかったそうですが、あるカンファレンスでその話を聞いたときに、

"My immediate thought was that would make a perfect video on YouTube,"

「これは YouTube 向けに完璧なビデオができるぞ、とすぐに思った」

そうです。実際にこのビデオは10月19日に投稿され、これまでに4万回以上視聴されると共に、100件を超えるブログエントリで取り上げられたとのこと。まさしく狙い通りの結果になったわけですね。

これまでのところ、オリジナルの"Onslaught"ビデオが伝えたかったこと（美容産業に踊らされるな）については批判は少ないようですが、やはり「Dove = AXE」を知った人は「ユニリーバ自身はどうなの」という意見になるようです。こういった「あるブランドのメッセージが、同じ企業の他のブランドのメッセージと対立する」ということはこれまでにも起きていたのだと思います。かつてはマスメディアか競合する企業でもなければ、それを広く知らしめることはできなかったわけですが……現在はそれに気付いた人が1人でもいれば、こういった形でクチコミが広がってしまう、ということなのでしょうね。