アメリカで登場した新しいRSSリーダーが物議をかもしています。それがこちら:
■ Shyftr
一見何の変哲もないWEB型RSSリーダーのようですが、最大の特徴は「Shyftr 内でコメントできる」ということ(上のスクリーンショットでも、画面右側に"Recently Commented"という欄があるのが分かるでしょうか)。残念ながら Shyftr 内で投稿されたコメントは元ブログには反映されないため(そこまでできたらスゴイですが)、Shyftr 上でしか確認されないコメントが生まれることになります。
「それでもいいじゃん、だって既に『はてなブックマーク』みたいにコメントが付けられるサービスがあるし」「すべてのコメントをチェックしなくてもいいだろ?」というのは僕等の発想で、あちらでは FriendFeed 登場時にも「コメントが分散し、チェックしづらくなって困る」という意見が出たように(実際 FriendFeed 上でのディスカッションは英語圏の方が盛んに行われています)、「WEB型RSSリーダー内でコメントが付けられるようになるのは是か非か?」という議論が起きています(例えばこちらの記事)。
また今回のポイントは、「全文RSSフィードの場合はコンテンツ盗用にあたるのではないか」という指摘。はてなブックマークだって、引用は一部だけですから、はてブ上での議論(あれを議論と呼ぶかどうかは人によって意見が分かれるでしょうが)に参加するには元記事にアクセスするしかありません。しかし全文フィードを表示し、そこでコメントが付けられれば元記事を読む必要がありませんから、元の記事から完全に切り離された世界で議論が行われることになります。これから Shyftr がどれだけ人気を集めるかは分かりませんが、Shyftr 上でコメントが盛り上がっているのに、元記事には一切アクセスされないという状況まで起きる可能性があります(ちなみに Shyftr には"Popular"というメニューがあり、ここでコメント数の多い記事をコメント数順に閲覧することが可能)。
これを「コンテンツ盗用だ!」と言いたくなる気持ちは分かります。自分のサイトのアクセスが増えない、従って広告収入も上がらないとあっては、Shyftr に反対するのも当然でしょう。しかし Robert Scoble はこんなことを言っています:
■ Era of blogger’s control is over (Scobleizer)
The era when bloggers could control where the discussion of their stuff took place is totally over.
This is a trend that the best bloggers should embrace. Me? I follow wherever the conversation takes me.
As someone else wrote: steal my content please.
「自分のコンテンツに対する議論がどこで行われるか」をブロガーが決定できる時代は終わった。
これはブロガー達が認めるべきトレンドだ。僕?僕はカンバセーションが連れていくところなら、どこへでも行くよ。
誰かが書いていたように、「どうぞ僕のコンテンツを盗んでくれ」っていうわけさ。
正直な気持ち、僕もブログから広告収入を得ている身としては、「ページビューが減ってもかまわない」などとは言えません。しかし単に「ページビューを稼いだか否か」でブロガーの評価を決めてしまうのも無理があります。「有益な議論の出発点になったか」「その記事が発信源となって、どれだけ派生記事が生まれたか」などの点でもブロガーが評価されるような環境になれば、Shyftr のようなサービスが生まれても一概に批判されることはなくなるのではないでしょうか。
ちなみに、残念ながら日本語でのコメントは不可でした(日本語のコンテンツ自体の表示は可能)。
< 追記 >
ここから先は根拠のない個人的印象ですが、「はてブ」でコメントが付きやすいのは、「ここは自分の庭」というイメージがしやすいからだと思います。逆に他人のブログは「他人の庭」なので、コメントするには心理的抵抗があると。であれば、RSSリーダーという「自分の庭」でコメントできるような仕組みが、逆にブログのコメントを活性化することにつながっていくのかな……とも期待しています。
< 追記 4/15 >
残念なことに、批判を受けて仕様変更が行われました:
■ RSS Feeds, Community, Publishers, and Revisions (Shyftr Blog)
公式ブログでの発表。全文フィードであっても、記事タイトル、著者、投稿日時しか表示しないようにするそうです。このまま突っ走って議論を呼んで欲しい、という期待(?)もあったのですが。
「他人の庭」「自分の庭」という感覚は納得ですね。私なぞはこうして他人ん家にもズカズカと上がり込んで放言しまくる訳ですが、そんなのは特殊事例だと分かってますし。
あと、記事中にある『コメントが分散し、チェックしづらくなって困る』と云うのと同じ考え方で、「イチイチ他人ん家の庭にコメント付けて回るのはチェックしづらくて困るから、自分家の庭にまとめてコメントを残す」という考え方もあるよな、と。コレなんかは、はてなブックマークのコメント附記の考えですかね。
ソレはソレとして、本人を目の前にした状況でその当人に関する議論はやり辛いよねって感覚もあるかも知れませんし、当人にしてみれば、自分の与り知らないところで勝手な議論が進むのもイヤだよなという感覚もあるでしょうし、決着のしようがない問題でしょうかね。
もちろん、本気で拒否するならアクセス拒否設定という手もあるんで、実は大した問題ではないとも思いますが(笑)
投稿情報: n-yoshi | 2008/04/13 09:12
n-yoshi さん、コメントありがとうございます。
いえいえ、コメント欄にはどんどん上がっていって良いと思いますよ。少なくともウチは大歓迎ですのでw
> あと、記事中にある『コメントが分散し、チェックしづらくなって困る』と云うのと同じ考え方で、「イチイチ他人ん家の庭にコメント付けて回るのはチェックしづらくて困るから、自分家の庭にまとめてコメントを残す」という考え方もあるよな、と。コレなんかは、はてなブックマークのコメント附記の考えですかね。
仰る通りだと思います。ブロガーだけじゃなく、コメントする側にとっても、「他人のブログ」にコメントを残すのってコメント管理しづらくなる訳ですよね。以前その辺を解決するサービスとして"CoComment"がありましたが(って今もありますが)標準となるにまで普及していません。「ああ、この手があったか!」とブロガー/読者の両方が納得するような「コロンブスの卵」が、どこかに隠れているようにも感じるのですが。
投稿情報: アキヒト | 2008/04/14 12:59
『コメントが分散し、チェックしづらくなって困る』
っていうのはありますね
何時何処に書いたかを忘れるような態度なら軽々とコメントするな
と怒られそう(誰からよ?(;´Д`)ではありますが
むしろそれをスグに確認できるようなシステム有ったら面白いかなー
とか思いますけど、そんなのイチイチ使う奴はごくごく少数なんだろうなぁ
投稿情報: nyamaire | 2008/04/14 16:47
私は結局 SBS にねじ込んでます。
具体的には del.icio.us でタグ付きブックマークして、
http://del.icio.us/nyoshi/COMMENT
その URI を今度は Fx のブックマークに放り込んで簡単アクセスする、と言う方法。
面倒ではありますが、まあ管理はできるからコレでイイや、と。
でも、コメントに対する反応があったかどうかを確認するのに、結局はそこのページを訪問するなりしないとならないので、まだまだ改善の余地はありますね。
例えば、コメント feed に対応しているところについては、その feed も自動で fetch して新着コメント数を明示する、とか。
投稿情報: n-yoshi | 2008/04/14 20:45
> nyamaire さん
コメントありがとうございます。
そうなんですよね、CoComment があまり定着しなかったように、ツールがあってもよほど手軽(もしくはすごく便利)でないと使われないように思います。SBMでも Twitter であっても、あらゆる「コメント」を一元管理できてしまうような「コメント投稿用スーパーエディタ」でもあればいいのですがw
> n-yoshi さん
なるほど、工夫されていますね。確かにコメントのフィードを吐いている場合は、コメント投稿と同時にフィードも登録してくれる……なんて自動化がされていたら便利かもしれません。誰かがあっと驚くような解決法を生み出して、市場をかっさらうような気もするのですが、期待し過ぎかなぁ。
投稿情報: アキヒト | 2008/04/15 15:56