拡張現実(AR)というと、どうしても視覚を中心とした装置を想像します。しかしこのアイデアは、「音」だけでも画期的な効果をもたらすことができるという好例ではないでしょうか:
■ Ghost in the Machine (Yanko Design)
Markus Kison というデザイナーの方がデザインした"touched echo"という装置について。これはドイツ東部の都市、ドレスデンに設置されたもので、エルベ川を望む川岸の金属製の手すりに仕掛けられているそうです。
以下は実際にこの装置を体験しているところ。特に何の変哲もないのですが、以下のように手すりに肘をついて耳をふさぐと……
実は骨を通じて音が伝わり、通常では(空気を通じては)聞こえなかった音が聞こえてくる、というもの。日本でも携帯電話に採用されて話題になった「骨伝導」という技術ですね。以下のように、金属板にインストラクションも示されています:
それではどんな音が聞こえてくるのか。ドレスデンという街、そして上の金属板に書かれた"13.2.1945"という数字で察しが付く方もいらっしゃると思いますが、実は第二次世界大戦中に起きた「ドレスデン爆撃」の際の音(爆発音や爆弾が落ちてくる音、飛行機のエンジン音等)が聞こえるのだそうです。観客(?)はあたかも空襲を受けているかのように、頭を抱えて耳をふさごうとしますが、恐ろしい音が響いてくる……という仕組み。骨伝導技術を非常に上手く使った例だと言えますが、例えばハイパーソニック・サウンドを活用するなどして、他の場面にも応用可能なアイデアではないでしょうか。
先日シロクマ日報の方でも、ベルリンに設けられた拡張現実の仕組みを取り上げました:
■ 歴史を語る拡張現実 (シロクマ日報)
その際にも書いたのですが、歴史的事実を拡張現実で伝えることによって、「自分が今まさにいるこの場所で、かつてこんな事件が繰り広げられていたのだ」という感覚を強く与えることができるのではないでしょうか。もちろんエンターテイメントの方向に拡張現実が応用されるのも良いことですが、こういった教育的な分野にもどんどん活用が進んで欲しいと思います。
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