高木浩光さんの一連のエントリ(ストリートビュー問題)により、すっかり邪悪度メーターがMAXに振り切ってしまった感のある Google。しかしこの辺の対応のまずさは日本法人だけの問題という可能性も、と思っていたのですが、ちょうど米国でもこんな話がありました:
■ Can’t Open Your E-Mailbox? Good Luck (New York Times)
Lynch さんというIT系の起業家が、原因不明で Gmail ログインできなくなってしまい……という話。日本でもどなたかが記事にしていたような記憶があるのですが、Gmail ユーザーの方々、このようなケースで Google はどの程度助けてくれると思いますか?
Google does provide phone support to Gmail customers who subscribe to Google Apps Premier Edition, which costs $50 annually and includes larger storage quotas and other benefits. Customers who use the advertising-supported version of Gmail, however, must rely solely on what Google calls “self-service online support.”
Gmail には電話サポートがあるが、使えるのは年会費50ドルの Google Apps プレミアエディションに申し込んだ人だけだ(ちなみにこれに申し込むと、他にもストレージの量が増えるなどの特典がある)。広告付きバージョンの Gmail ユーザーは、Google が「セルフサービス・オンラインサポート」と呼ぶものだけに頼らなければならない。
ということで、答えは「無料版ユーザーはオンラインサポートしか助けにならない」でした(ちなみに Lynch さんは、無理矢理 Google の関係部署につながる電話番号を調べ上げ、社員をつかまえて4週間かけてリカバリしたとのこと)。「オンラインサポート」というのがどんなものかは、Gmail にログインする画面で"I cannot access my account (アカウントにアクセスできない場合)"をクリックしてみれば分かります。対話型のFAQのようなものですね。
まぁこの対応はウェブサービス系なら珍しいものではありませんし、「プレミアサービスのユーザーにだけ電話サポートを行う」というのは Microsoft、Yahoo! でも同じだということが記事内で指摘されています。しかし、ほとんどの場合にはこれで十分だとしても、アカウントが何らかの理由で盗難にあったり、Gmail 側に原因のある問題が起きた場合はどうするのか。メールは個人にとって重要なコミュニケーションツールだし、無料版だって Google は広告を売って儲けているのだから、困った人のために電話サポートを開設しても良いのではないか――という主張がなされています。
しかし Gmail でヘルプデスクを開設するとなれば、大変なコストがかかるのではないか?というのは当然出てくる疑問です。ところが Google は効率性や個人情報保護という点から電話サポートに否定的な姿勢を見せているにも関わらず、なぜかコストに関しては特にコメントしていません。そこで記事内では、こんな事例が紹介されています:
Google says it has “tens of millions” of Gmail customers. (It declines to be more specific.) If it’s willing to consider phone support for account-access emergencies, it can take heart in the example of Netflix, which last year adopted phone support with enthusiasm, replacing online support completely. For all customers. For all problems. And without resorting to an offshore call center.
It turns out that a staff of 375 customer service representatives are enough to handle calls from Netflix’s 8.4 million customers, answering most calls within a minute. Netflix says with justifiable pride that it has received the top ratings in online retail customer satisfaction by both Nielsen Online and ForeSee Results.
A Netflix spokesman explained the complete switch to phone support: “Most people don’t need customer service,” he said, “but when they do, they want it now.”
Google は膨大な数の Gmail ユーザーが存在していると主張している(正確な数は明かされていない)。仮にログインできない人々のために電話サポートを始めようと思うなら、Netflix の事例が役に立つだろう。彼らは昨年、オンラインサポートをやめて電話サポートに転換した。全てのユーザーが、どんなことでも聞くことができ、海外のコールセンターに回されることもない。
その結果明らかになったのは、840万人のユーザーに対して、375名のサービス要員がいれば事足りるということだった。ほとんどの電話は、数分で終わる。Nielsen Online と ForeSee という2つの企業から、Netflix はオンライン小売業の中で高い顧客満足度を記録している、との評価を受けた。
Netflix のスポークスマンは、電話サポートに完全移行した理由についてこう語った:「ほとんどのお客様はカスタマーサポートなど必要としていません。しかし必要となった時は、即座に対応して欲しいと望むものです。」
この問題、個人的には「まぁ無料なんだし、ウェブメールだし、そんなに目くじら立てることでもないのではないか」という気もします。しかし Google が今後も成長を続けたいのならば、「困ったら大企業は電話で助けてくれる」ことを期待する人々を相手にしなければなりません。(ストリートビュー問題で見せたように)彼ら自身の独自理論を展開して、サポートのコストを負担しないというのは受け入れられなくなっていくでしょう。ならば Netflix のように、積極的にサポートに投資して、ユーザーの満足度を上げるというのも1つの戦略になると思います。
しかしこの Gmail の例やストリートビュー問題の例を見ていると、Google は「普通の人々」とコミュニケーションするのが下手な会社なのかな、という気にさせられます(何が「普通の人々」なのか、という話はありますが)。考えてみれば、Google は創業からまだ10年。成長のスピードがあまりに速く、彼らの感覚と世間一般の感覚との間で調整が行われる前に、どんどんズレが生じてしまっているというのでなければ良いのですが。
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