■ ダーウィンの進化論、米国人で信じているのは40% (AFPBB News)
を読んで。別に米国人の知識レベルが低いだとか、日本人がその逆だとか言うつもりはなくて、以前読んだセス・ゴディンのエントリを思い出しました:
■ Gravity is just a theory (Seth Godin's Blog)
進化論と重力。どちらも素人にとっては「科学者がそう言っているから」信じられるというレベルの知識ですが、なぜ重力は誰もが受け入れていて、進化論は(少なくとも米国では)そうではないのか。セスはマーケティングの専門家なので、この問題についてもマーケティングの側面から説明を試みています:
1. いまから売り込もうとしている「物語」が、以前から信じられていた「物語」を捨て去らないといけない場合、売り込みは大変になる。
「なぜ多種多様な生物がいるのか」という問題に対し、米国には既に「聖書」という答えがあり、進化論はこれに対抗しなければならなかった。一方、重力はというと、リンゴが落ちるという現象に対して「これは重力というものですよ」という解釈を与えるだけでよかった。
2. いまから売り込もうとしている「物語」の時間枠が、売り込み対象の人間が注意可能な時間の長さ(もしくは人生の長さ)より長い場合、同じく売り込みは大変になる。
進化の速度はごくゆっくりで、人間が実感することは難しい。一方、重力はというと、リンゴが落ちるところを見せてやるだけでよい。(これはなぜ、全米の科学者らが「ヒトとネアンデルタール人との遺伝的類似性から、惑星の形成方法やカラスが道具を使って昆虫を捕る方法まで、ありとあらゆる場面で進化というものを観察することができることを示した文書を発表した」のかという理由を説明するものでもありますね。)
……もちろんこれが原因の全てではないと思いますが、特に理由<1>は「なぜ米国では進化論を信じる人が少なくて、日本では多いのか」をよく説明していると思います。子供の頃から「生き物は神が創造した」と教え込まれてきた人が、いきなり「実は進化という現象だ」と言われてもすぐには飲み込めないでしょう。日本人の方が信心深くないとは思いませんが、日本の宗教では天地創造の神話を教える場面が少ないことが、「進化論という概念を受け入れやすい」という状況に貢献しているのではないでしょうか。
ちなみにこの2つの仮説から、セスはこんなアドバイスをしています:
Tactic 1: Try to tell a story that complements an existing story rather than calling it out as false.
Tactic 2: Try to make the 'proof' as vivid and immediate as possible. Like an apple falling on your head.
戦術1: 既存のストーリーを「ウソだ」と言うよりも、それを補うようなストーリーを語るようにせよ。
戦術2: ストーリーの「証拠」は鮮明で、すぐに感じられるものにせよ。頭の上に落ちてくるリンゴのように。
で、例えば米国で針治療を売り込む際の戦術として「西洋医学は間違っている!と言うよりも、いま受けられている治療を補うものとして最高ですよ、と売り込んだ方が良い」などと提案しています。なかなか実行に移すのは大変かもしれませんが、少なくとも自分の売り込もうとしているストーリーが「米国における進化論」のようになってしまっていないか、注意してみる価値はありそうですね。
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