というわけで、昨夜はユニクロの『THE COLOR SHOW TOKYO』にお招きいただき、シルク・ドゥ・ソレイユのサーカス『コルテオ』を観てきました。シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスを観るのは、昨年12月の『ZED』に続いてこれが2回目。前回は自費で、今回はお招きでの鑑賞となりましたが、せっかくなので「ZEDも観たいけど、コルテオと迷っている」という方のために見どころなどを紹介しておきたいと思います。
【全体的に】
いきなり全体で恐縮ですが。個人的に舞台を観たり、ライブの音楽や人の歌声を聴くのが大好きなので、今回の『コルテオ』も非常に楽しめました。『ZED』同様、『コルテオ』もアクロバットに合わせて音楽と歌がライブで披露され(録音だとパフォーマーとの呼吸が合わなくなる危険があるわけですね)、しかも単なるBGMに留まらない程のクオリティの高さ。演目と音楽と歌が一体となって、他に類のない芸術を創り上げています。
従って「コルテオとZED、どちらが上か」という質問は個人の好みの問題になってしまうのですが、僕としては『コルテオ』の方が楽しめました。理由は後述しますが、舞台の世界観という点で『コルテオ』の方が完成度が高く、その分感情移入ができたため。単にアクロバットの素晴らしさという点では、両者とも甲乙付けがたいのですが、その上に更に登場人物の「感情」が感じられるという点で個人的に『コルテオ』を推します。
【舞台】
上の写真だとちょっと分かり難いかもしれませんが、『コルテオ』の舞台は円形をしていて、両端に袖があるという格好になっています(「シルク初となるセンターステージを囲んだ大円形劇場」とのこと)。袖があることで観客席は二分され、さらに開演前はご覧の通り、袖にそって緞帳が降ろされています。この緞帳は二重になっていて、その間にできた空間は、ちょうど円の中心をつらぬく廊下のよう。円形劇場と言うよりむしろ「舞台は観客席を二分する『道』の形をしており、中央部分が丸くふくらんでいる」と表現した方が適切かもしれません。
実は『コルテオ』とはイタリア語で「行列」を意味しており、様々な場面で、ご覧のように出演者たちが舞台を駆け抜けてゆきます:
『ZED』のように機械仕掛けで次々と変化する舞台ではありませんが、この緞帳と「道」という形状が上手く活用されており、パフォーマンスの風合いを増しています。さらに演目は全て両サイドを意識して行ってくれるので、どちらかが得ということはありませんのでご安心を。
ちなみに僕はプレス席をご用意いただいたので、かなり前で観ることができたのですが、最後尾の席からでも見づらいということは全くありませんでしたよ。むしろ後ろの席の方が、パフォーマンス全体が観れて良い場合があります。これは『ZED』の時も感じたのですが、逆に席が前過ぎると、空中で行われる演目(これが結構あります)の時に首が痛くて痛くて……。『コルテオ』の場合も、全体像を観たければあえて後ろの席を、出演者の肉体美を堪能したければ前の席を取るという風に考えた方が良いかもしれません。
【世界観】
『ZED』が世界各地の文化をごちゃまぜにし、無国籍な空気を創り出しているとすれば、『コルテオ』は明らかにイタリア・スペイン周辺を模したつくりになっています。ストーリーがはっきりしていないのは両者共通なのですが(一応両方とも「こういうイメージで創りました」という程度の物語はあります)、『コルテオ』では「ヨーロッパ各地を旅して歩くサーカス一座」という姿がはっきり感じられ、一人ひとりが本物のサーカス団員のように感じられるほど(シルクもサーカスの一種なのですから、出演者は本当に「サーカス団員」なのですが)。さらに『ZED』は神話の世界をイメージしていただけに、ことさら『コルテオ』の方が感情移入しやすいと感じたのかもしれません。いずれにしても、フェリーニの映画の中に出てくるサーカスのような、そんなノスタルジックな世界観を感じるパフォーマンスでした。
【音楽】
繰り返しますがイイです。『ZED』の時も感じたのですが、『コルテオ』でも音楽が効果的に使われ、演目の迫力や感動を高めています。これは恐らく、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンス全てにおいて、音楽や歌の力が重視されているのでしょうね。
で、これまた前述の通り、『コルテオ』の世界観はイタリア・スペインを中心としたヨーロッパ。民族音楽風の調べが多用されていて、得にダンス風の音楽では自然と手拍子が出てしまうと思いますよ。また口笛とバイオリンと水入りグラス(!)が共演するという、音楽が全面に出てくるシーンもあるので観に行かれる方はお楽しみに。
ちょうど僕が座った真後ろの席が、オーケストラピットならぬサーカスピット(?)になっていました。『ZED』同様、演奏者や歌手もちゃんと衣装を着ています。
【演目】
この点については、『ZED』『コルテオ』の間で大差ないと思います。もちろん全て同じ演目というわけではなく、共通しているもの(綱渡りやジャグリング、エアリアル・シルク)もあればそうでないものもあるのですが、どちらもあっと息を呑むような迫力を感じることができました。従ってこれも好みの問題になるのですが、個人的に今回特に面白かったのが……
ベッドの姿をしたトランポリンでアクロバットを披露する「バウンシング・ベッド」と……
シーソーのような板の上で交互に飛び跳ねる「ティーターボード」。どちらもちょっとコミカルなところがあったりして、かなり楽しめました。もちろん他にも、『ZED』『コルテオ』とも難易度の高い演目のオンパレードですので、どちらを観に行っても「人間の身体能力って素晴らしい!」と感動すると思いますよ。
……というわけで、最後はスタンディングオベーションで終わっていったのでした。心なしか、『ZED』の時より立ち上がる人が多かったような。と言うと『ZED』が可哀想になってしまいますが、なにしろ『コルテオ』は2005年に開幕以来、北米で200万人以上を動員した作品です。『ZED』は常設シアターですし、これから練り上げられたバージョンがいつでも観れると思えば、迷ったらまずは『コルテオ』を観ておいた方が良いのでは?というのが僕の結論でした。
コルテオは素晴らしいですよ!!バウンシングベッド
もそうですし細かいところまでちゃんとしています☆
ほとんど失敗していないところがスゴイ♪
投稿情報: はるか | 2010/01/16 17:31