SNSに蓄積される「資産」は、ソーシャルグラフだけではありません。様々な人々の個人情報から行動記録に至るまでが、いまやSNSというサービスに集められるようになっているわけですね。
そんな資産を活用して、LinkedInがこんなユニークな結果を発表したそうです:
■ LinkedIn Wants To Help You Name Your New Baby/CEO (Fast Company)
LinkedInが登録されているユーザーのデータを集計して、CEOの名前でポピュラーなものベスト10(男性版/女性版)を発表したとのこと。ちなみに男性版ベスト10は:
- Peter
- Bob
- Jack
- Bruce
- Fred
- Bill
- Ron
- Christian
- Alexander
- Don
で、女性版ベスト10が:
- Deborah
- Sally
- Debra
- Cynthia
- Carolyn
- Pamela
- Ann
- Cheryl
- Linda
- Janet
とのこと。これだけだとフーンという感じなのですが、その後の考察がちょっと興味深いです:
Frank Nuessel, a linguist and the editor of Names: A Journal of Onomastics, notes the prevalence of shortened names, or nicknames, among men, while there is a tendency for women to use their full names. Since names are a form of self-presentation on LinkedIn, Nuessel speculates that men may be trying to project an aura of familiarity, now that they’re at the top. As for the women, Nuessel cautions that this is a speculation, but he thinks some may have chosen to “maintain a certain decorum,” based on the fact that women routinely achieving CEO positions is a “relatively recent” phenomenon, historically.
言語学者で"Names: A Journal of Onomastics"誌編集者のFrank Nuessel氏は、男性版ランキングに短縮名やニックネームが多いのに対し、女性版ランキングでは正式名が使われている傾向がある点を指摘している。名前はLinkedIn上における自己表現であるため、頂点にいる男性たちは、親しさのオーラを醸し出そうとしているのではないかというのがNuessel氏の考えだ。女性については、Nuessel氏は推測であることを前置きした上で、礼儀正しさを保とうとしているのではないかと述べている。歴史的に見て、女性がCEOの地位まで到達することが日常的な光景になったのは、つい最近のことだからだ。
とのこと。確かにSNS上の名前は自分で登録するものですから、公的なデータベースに登録されているような情報とはまた違った傾向が見て取れるわけですね。こうやって考察してみると、SNSに登録されたデータから様々な社会的背景を分析することが可能なようで、先程のNuessel氏は「LinkedIn上のデータは言語学・社会科学にとって非常に重要だと思う」と述べています。
で、さらに面白いことに、より詳細な分析結果もLinkedInから発表されているのですが、例えば米国内限定の女性エンジニア名前ランキングから:
- Kiran
- Jun
- Yi
- Ming
- Li
- Priya
- Irina
- Olga
- Marina
- Elena
Nuessel氏がこんなことを指摘しています:
"Several are Asian, and as many as three appear to be Italian. It is, of course, not possible to determine more than that. It may suggest that some families are steering their children in a particular career path because this path (engineering) is desirable for its financial rewards and the social status that it bestows."
「この中でいくつかはアジア系の名前で、3つがイタリア系だと思われる。もちろん、それ以上のことを決めつけることはできない。ただ一部の家庭では、子供たちを特定の職業に就かせようとしているのかもしれない。エンジニアは収入が良いし、社会的地位も高いからだ。」
ということで、仰る通り名前からだけで決めつけることは危険ですが、米国内でアジア系住民の力がエンジニアリングを支えている表れの1つ、と考えることもできるかもしれません。またこれはNuessel氏自身も指摘しているのですが、こうしたランキングを将来の結果と比べることで、社会の変化を分析することにも役立つでしょう。
ということで、ビジネス系(ということは即ち実名系でもある)SNSのLinkedInだからこそ行える分析かもしれませんが。こうして見てみると、SNSはソーシャルグラフを研究する場としてだけでなく、社会学全般の研究に使われることが増えてくるのかもしれませんね。
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