いちど恥ずかしいことをすると、なかなか消すことができないオンライン上の評判。「本人が悪い」のは確かにその通りなのですが、心を入れ替えてやり直そうとしている時に、何年も前の失敗や出来心が簡単に検索できてしまうのは都合が悪い……ということで、「オンライン上の評判を変えてくれるサービス」があること、実は4年も前にこのブログで紹介していました:
■ 名誉回復SEO
要は名前で検索した時に、悪い評判が書かれた記事が上位表示されることのないよう、SEO的テクニックを駆使して何とかしてくれるわけですね。で、以前はこういったサービスを利用していたのは一部の人々や企業に限られていたものが、最近は一般にも利用者を増やしていることがニューヨークタイムズ紙で紹介されています:
■ Erasing the Digital Past (New York Times)
While Mr. Tom’s firm attracts a more affluent clientele, other companies report a broad customer base. It includes college students trying to delete drunken party photos before corporate recruiters find them, a corporate lawyer who wanted to remove non-work-related photos of himself from the Web as he tried to become a partner within his law firm and a real estate agent in Miami whose listings were obscured by blog posts that chronicled an arrest for driving under the influence.
Tom(※Bryce Tom、この種のサービスを提供している業者の一人)の顧客には富裕層が多いが、他の企業はより幅広い人々が顧客になっていると述べている。その中には、企業のリクルーターが見つける前に、パーティーで酒を飲んでいる写真を削除してしまいたい学生や、事務所の中でパートナーのポジションを狙うため、仕事とは関係のない写真を削除しておきたい弁護士や、飲酒運転で捕まった時のブログ記事が表示されてしまうために、広告が台無しになってしまっているマイアミの不動産業者などが含まれている。
まぁ懐かしのWEB2.0時代から個人が日常生活を書き込むという行為は一般的になっていたわけで、さらにその情報が他人とつながるソーシャルメディア時代が到来しているわけですから、こんなサービスがより繁盛するのは当然と言えば当然でしょう。
さらにソーシャルメディアの時代になって、都合の悪い情報を「もみ消す」テクニックも進化しているようです:
ONCE something is online, it can be very difficult, if not impossible, to delete. So tweaking one’s online reputation usually boils down to gaming the search engines. Image-conscious people with an understanding of the Web’s architecture can try doing it themselves, by populating the Web with favorable content. That might involve setting up their own Web site or blog, or signing up for popular social networks like Facebook, Twitter and LinkedIn.
With any luck, those sites will appear first on a Web search, and push down any offending material. But these tactics have their limits, especially when the Web sites in question are popular and optimized for search engines.
いちどオンライン上に公開されてしまった情報は、不可能とは言わないまでも、削除することは非常に難しい。そこで通常、誰かのオンライン上の評判を改ざんするというのは、検索エンジンの結果をコントロールするということになる。ウェブの構造について理解している人であれば、それを自分でやってしまおうとするだろう。自分に有利なコンテンツをウェブ上に溢れさせるわけである。例えば自分のウェブサイトやブログを開設したり、FacebookやTwitter、LinkedInといった有名SNSサイトを利用したりするわけだ。
運が良ければ、そういったサイトに書き込んだ記事が検索結果の上位に表示され、都合の悪いコンテンツを下に押し下げてくれるだろう。しかしこの作戦には限界がある。特に問題のコンテンツが掲載されているのが、検索エンジンに対して最適化され、人気のあるサイト上である場合には。
例えばニュースサイトや人気ブログ上で何かを書かれてしまったら、それに対抗するのは個人の力では難しいわけですね。そこでエキスパートが登場する、つまり「評判変更サービス」がビジネスになる、と。
ただ一概にビジネスになるといってもその姿は様々なようで、記事では120名の社員を抱える企業から、腕の良いプログラマーがごく小規模で(そして独自開発したプログラムを活用して)運営しているサービスなどが紹介されています。また料金も年間120~600ドルというものから、有名人向け(つまりより難しい作業になる)には5,000~10,000ドルなど、言い値に近いような状態もあるようです。それから「啓倫」なんて名前のように、珍しい氏名を持つ人の場合もやっかいなのだとか(笑)
オンライン上では、一度暴かれた情報は消しさることができない――それはある意味では正しいと思いますが、反面では怖い状況とも言えるでしょう。法的な罰が「社会的制裁」という面から減ぜられることがあるように、社会全体に自分の悪事が知れ渡るというのは、非常に大きな不利益となります。従って上記のようなサービスが登場してくるわけですが、カネさえあれば過去をもみ消せるというのも、それはそれで問題ではないでしょうか。これからますます「誰かの過去を簡単に検索できる時代」になるにつれ、社会的制裁の行き過ぎを是正しようという動きも生まれてくるのではないか、と思います。若干脱線気味の感想ではありますが。
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