ついに隠れ家を押さえられ、米軍によって殺害されたウサマ・ビン・ラディン。その是非をめぐって様々な反応が起きていますが、米国内での傾向を示す1つの資料として、ニューヨークタイムズ紙が作成したインフォグラフを紹介しておきたいと思います:
■ The Death of a Terrorist: A Turning Point? (New York Times)
President Obama’s announcement Sunday night about Osama bin Laden’s death produced an outpouring of reaction. But has the killing of the most wanted man in terrorism made the world safer? Was his death significant in our war against terror? And do you have a negative or positive view of this event?
先週日曜日の夜、オバマ大統領はウサマ・ビン・ラディンの死について発表を行いました。この発表は様々な反応を引き起こしましたが、果たしてこのテロに関する最重要人物の死は、世界を平和にするのでしょうか?私たちの「テロに対する戦争」において重要な意味を持つのでしょうか?またこの事件に対する思いは好意的なものでしょうか、それとも否定的なものでしょうか?
との質問(既に回答の募集は打ち切られています)に対して寄せられたコメント、1万753件を分析し、「事件の重要性」と「事件に対する感情」の2軸でグラフ化したもの。念のため結果のスクリーンショットがこちら:
グラフの見方は簡単で、プロットされている小さな点が個々のコメントを示しています(色が濃ければ濃いほど、同じ場所にプロットされているコメントが多いことを示す)。点の上にカーソルを合わせれば、個々のコメントの本文を読むことも可能:
「(遺体を)海に捨ててやったぜ!最高の気分だ!」
グラフの縦軸が事件の重要性に対する評価となっており、上に行けば行くほど「ビン・ラディンの死は重要」と思っていることを、下に行けば行くほど「彼の生死は重要ではない」と思っていることを示しているわけですね。そして横軸がこの事件に対する感情で、右側が「好意的」、左側が「否定的」となります。つまり「ビン・ラディンは諸悪の根源だ!」的な意見を持つ人のコメントであればあるほど、右上の方にプロットされると。
で、結果は予想通りと言うべきか、右上のマスの色が一番濃くなっていることが分かります。また「ビン・ラディンが諸悪の根源」という思考と、「ビン・ラディンが嫌い(死んで欲しい!)」という思考は結びつきやすいはずですから、左下から右上へと伸びる線がうっすらと見えていることも、ある意味で予想された結果でしょう。善し悪しは別にして、あれだけのテロ事件の当事者となった国ですから、こうした反応が起きることは理解できます。
ただ無視できないのは、グラフの中心と左端にうっすらと線ができていること、すなわちビン・ラディンの死に対して(感情面で)中立な立場を取る人、またはっきりと否定的な立場を取る人もいるということでしょう。結果的にキング牧師の言葉ではないということになりましたが、「たとえ敵の命であろうと、それが失われたことを祝おうとは思わない」という言葉がTwitter上で何度もリツイートされていたのは、それが別の形で現れたものと見なすことができるかもしれません。
いずれにせよ、「U-S-A!」を連呼する市民の姿だけが米国の現状ではないことを、このインフォグラフからは感じ取ることができるのではないでしょうか。
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余談ですが、9.11「以前」のウサマ・ビン・ラディンと米国の関係については、『倒壊する巨塔』 が非常に参考になります。上下巻ですがこの機会に改めてビン・ラディンとは何者だったのか?を考えておきたい方は是非。彼の死で何かが解決するほど簡単な問題ではない、ということが実感できるはず。
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