オフィスで入退室した時間が記録される。閲覧したウェブサイトの履歴が記録される――なんて「従業員監視」は当たり前の時代ですが、そんな監視が従業員からも歓迎されるなんてことはあり得るのか。マイクロソフトが申請した特許を機に、こんな議論が起きています:
■ Microsoft Files Patent on Monitoring Employee Work Habits (LiveScience)
実際の申請へのリンクはこちら。この特許、一言で言えば従業員の管理システムなのですが、単に行動記録を取るだけではありません。組織にとって望ましい行動・望ましくない行動を判別し、それぞれの行動を点数化してレポーティングするとのこと。例として挙げられているのは、他人の会話を遮る(これは恐らくマイナスポイントですね)、部下の休憩時間を邪魔する(これも間違いなくマイナスでしょう)、会議の場に不似合いな服を着ている(これはかなり主観的な要素が入るような……)などなど、ウェブの閲覧に留まらず様々な行動が監視・点数化の対象になっているようです。
しかし面白いのは、監視の対象を広げていることや数値化してくれることだけではありません:
But the Microsoft patent idea doesn't automatically grant power to the boss or the HR department. It also envisions how workers might benefit from such monitoring software by getting feedback about their behavior directly, so that they could use it as a self-improvement tool. The patent even suggests privacy options that would allow employees to decide what gets monitored.
しかしマイクロソフトが申請している特許では、上司や人事部が自動的に権力を握れるようにはなっていない。この特許では、従業員が直接フィードバックを得ることも可能であり、従って自分自身を改善するツールとして使うことができる。監視ソフトから、監視される従業員自身が利益を得ることができるというわけだ。またこの特許では、「従業員自身が監視される行動を選択できる」というプライバシー・オプションも用意されている。
つまり監視ソフトというよりは、自分自身に対するフィードバックを得るためのツールという性格を持っているわけですね。さらに選択した行動だけが監視されるのであれば、自分の直したい部分だけを選んでチェックすることもできると。それで組織行動を望ましい方に変えられるのか?という疑問もありますが、フィードバックを得るという行為を自発的なもの、またある程度楽しいものとすることで、強制的な監視よりも効果を発揮することができるかもしれません。
自分自身の行動を可視化し、フィードバックが得られるようにするという点では、最近話題のゲーミフィケーションに通じるものがあるのではないでしょうか。まぁ、「部長、今週は部下の発言をさえぎる回数が10ポイント改善しましたね!」とか笑顔で会話する職場なんて想像できませんが、こういったアプローチも次第に洗練され、普通のものになって行くのかも?
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