先日住友スリーエムさん(以後3Mと略します)とのブロガーイベントが開催され、何名かのブロガーさんと一緒に同社の用賀オフィスにお邪魔してきました。この記事はそれに基づく記事広告となります。
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「3M」と言われた時に、どんな製品やサービスが頭に浮かぶか。それは恐らく、回答者の属性によって大きく異なることでしょう。例えばオフィスワークをしている人なら「ポスト・イットの会社」、家事をしている人なら「スコッチ・ブライトの会社」、医療関係者なら「あの医療用品の会社」といった具合です。それも当然、実は3Mが現在扱っている製品/サービスの合計は、3万種以上にもなるとのこと。正直な話、僕もポスト・イットとスコッチ・ブライトぐらいは知識があったものの、ここまで幅広い商材を扱っているとは思いもしませんでした。
当日はその中から数分野の担当者の方々が集まり、最新製品や現在進行形の新企画等々についてご説明いただきました。1つ1つの製品/サービスに関する開発秘話や、そこに使われている画期的な技術を聞いているだけで、何本も記事が書けそうです。もったいない。
例えば案内していただいた展示スペースの中に、「口の中にセンサーを入れるだけで歯並びを3Dで把握、データ化して別の装置に送ると自動的に義歯を作ってくれるマシーン(正式名称不明)」なんてものがありました。これなんて歯科技工の役割を根本から変える可能性もあるというのに、さらっと触れられただけで通り過ぎてしまったり。
歯科技工のビジネスモデルを変える(かもしれない)マシーンが無造作に。
非常に贅沢というか、自らの魅力に気付かないまま無邪気にふるまう女の子というか、まぁそんな喩えはどうでもいいんですけど、とにかく「それ1つ1つ掘り下げようよ!」感満載のイベントだったわけです。もったいない。
で聞いてきた話を全部共有したいところなのですが、そんなことをしていると3日間ぐらい寝ずに記事を書かなければならなくなるので、以下で象徴的な話を1つだけ。
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「電子聴診器」という機器をご存知でしょうか。読んで字のごとく、聴診器をデジタルにしたもので、デジタルであるが故に拾った音の増幅・記録・転送といった機能も実現されているというもの。まだ普通の聴診器(機械式聴診器)100に対して2~3程度の普及率ということですが、聴診器を使った医療行為に新たな可能性を開くものとして注目されています。で、この電子聴診器も手がけているのが3M。いろいろ書くと薬事法に抵触してしまうので慎重な表現にしておきますが、Littmann(リットマン)のブランド名で電子聴診器の開発を進めており、2011年度のグッドデザイン金賞を受賞するなど業界をリードする活動を行っています。
実は3Mでは機械式聴診器も同じ「Littmann」ブランドで扱っていて、その経験が電子聴診器にも反映されているとのこと。例えば電子聴診器はデジタル機器ですので、やろうと思えば先端部分だけのコンパクトな形にもなるそうなのですが、耳から伸びるクダに聴診器独特の重低音を出す秘密があるということで、あえてそのままの形状にしてあるのだとか。またお医者さんにこれまで通りのスタイルで診察してもらうことを可能にするという点でも、従来の形にこだわる意味があるのだそうです。
で、この電子聴診器が普及すると何が嬉しいのか。先ほど音の増幅・記録・転送が可能になると書きましたが、ここからすぐに思いつくのは遠隔医療への応用でしょう。お医者さんがいない地域であっても、患者さん自らが聴診器を胸に当てることで、離れた場所にいるお医者さんにデータを送信して確認してもらうことができます。実際にこの「離れた場所にいる人の心音をリアルタイムで聴く」「録音された心音を聞く」という体験をさせていただいたのですが、まるで目の前に相手がいるかのような感覚を受けました。
実はこの「遠隔聴診」、今年の9月6日に、当時軌道上に滞在していた古川宇宙飛行士に対して実施され、宇宙と地球を結んで診察を行うということが実現されています:
まさに究極の遠隔医療といった感じですが、個人的にそれよりも感銘を受けたのが被災地における利用の話。例えば避難所で診察を行うといった場合、きちんとした診療スペースが設けられていない場合もあり、その場合は大勢の人々がいる場所で聴診を行わなければなりません。従って音が聴きづらい上に、服を脱いでもらうのもためらわれるという状況があったわけですが、それを解決したのが電子聴診器の「拾った音を大きくする」という機能であったと。これは単純なようで、実は非常に大きな電子聴診器の価値と言えるのではないでしょうか。
また「記録」という機能を応用すると、聴診教育に利用できる可能性もあるのだとか。つまり実際の患者さんの心音を記録・共有することで、同じ情報をベースにあれこれディスカッションができるわけですね。これを進化させれば、医師によって診断が異なるといった事態を防ぐことに繋がってゆくのかもしれません。
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このようによくよく話を聴いてみると、ある製品が生まれてきた背景、そしてそれが生み出す世界といったものが、深く広がっているのを感じられるのが3Mの製品たちであるように感じます。その辺が知らされてないのって、非常にもったいない。
余談ですが、これは別の意味で広がりを見せた例:
■ パリのオフィス街で「ポスト・イット戦争」 窓一面に巨大アート (CNN)
とはいえそういった深さや広さといったものを感じろといっても、なかなか感じられないよというのが実際の話でしょう。先ほどの例のように、僕も初めて聞いたという話が山のようにありましたし、「そこもっと聞かせてよ!」という部分があったことを思うと、実は3Mの中の人であっても気付いていない側面が多いのかもしれません。ましてや「ポストイット戦争」のような展開については、誰も想像できないわけですし(これを宣伝に活用するわけにもいかないでしょうが)。
じゃあ埋もれている魅力、自分でも気付いていない魅力をどうやって発掘するの?という話ですが、自分で分からないなら他人に聞いてしまえば良いということで、社外とのコミュニケーションを活性化するというのが1つの方向性になるでしょう。今回のイベントにも、そういった要素が含まれていたと思います。集められたのはブロガーという特殊な人々ではあったものの、社員の方々が「面白いはず」と考える部分と、参加者が実際に「面白い!」と感じる部分のギャップがハッキリと浮き上がっていました。
ただ社外の人々とコミュニケーションする際に重要になるのは、質問者である企業の方で情報をコントロールし過ぎない、ということになるのではないでしょうか。今回のイベントでは企業秘密(当然ながらブログやツイッターでは書けません)に関わる部分も含め、かなりの情報を共有していただいたと感じています。だからこそ、3M側で「これは話しても面白くないだろう」と感じている部分まで参加者に伝えられ、その中から僕らが「これは面白い!」という発掘ができたわけです。仮に「この製品のスペックはこうで、ハイテクなのはこの部分で……」という解説だけであれば、興味が沸かずにフーンで終わっていたでしょう。
自分がカッコイイと思っている服装、カワイイと思っている化粧ほど他人には響かなくて、逆にそれが崩れる中で魅力が現れてくるように、企業もカッコイイ宣伝文句を捨て泥臭い話を明らかにして行く中で「これを伝えて来なかったなんてもったいない!」という部分が見えてくるように思います。もちろん社外秘まで全世界に発信しろとは言いませんが、企業にはまだまだ「パブリックにできるけれどパブリックにする意味がないと勘違いされている情報」が隠れているのではないでしょうか。何を出すのかではなく、何を出さないかを決めて、それ以外の領域に外部の人々が飛び込んでくることを許容してみる。今回の3Mイベントで見られたように、そんな発想の転換が求められるのかもしれません。
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最後にオマケを1つ。このように今回はいろいろな情報を共有していただいたのですが、実は12月9日に発売された以下の製品を、いち早くお借りすることができました:
■ 3M|ビデオカメラにプロジェクター機能を搭載した3M(TM) ビデオカメラプロジェクター CP45が新発売
小型のプロジェクタにビデオカメラ(静止画/動画の撮影が可能)をくっつけて、1つの製品にしてしまったというガジェットです。先日京都に行く機会があり(理由)、こんな感じで撮影を行ってきました:
あいにくの雨天+カメラマンの腕が悪い、という悪条件にもかかわらず、このくらいの画像は普通に撮影可能。プロジェクタにオマケでカメラが付いている、という感じではありません。
僕個人の印象としては、むしろ「デジカメにプロジェクタというオマケがついている」といった感じでしょうか。オマケという表現を使ってしまいましたが、もちろん普通に楽しむ分には申し分のないプロジェクタ性能です。自動○○補正といった高度な機能はありませんが、「いま撮った写真/映像、そこの壁(もしくは天井/テーブル/冷蔵庫などなんでも可)に写してすぐ見てみようよ!」という楽しみ方をするには十分でしょう。
で、この「すぐにみんなで見てみよう!」という体験の楽しいこと。僕は最初、京都の写真を家族に見せびらかすというイヤミな使い方をしてしまったのですが、すぐに娘に取り上げられて「その場で家中を撮影して即席上映会を行う」という使い方に変更させられてしまいました。しかし見慣れている家にもかかわらず、投影される映像というコンテンツにその場で置き換えられ、しかもそれを皆で共有するという体験になると、一気に楽しさが増すわけですね。「カメラとプロジェクタが一緒になった訳の分からないもの」だからこそ、生まれてくる世界なのでしょう。
ということでこのCP45、「カメラとしても使える小型プロジェクタ」「プロジェクタとしても使える小型カメラ」という捉え方で使うのも良いのですが、新しいエンターテイメント・ツールとして遊ぶのが一番ではないかぁという印象でした。デザインも洗練されてるし、仕事まわりでだけ使うというのはそれこそ「もったいない!」でしょう。
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