クリス・アンダーソンも注目の3Dプリンタということで、自宅で銃も作れちゃうなどといった話まで出てきていますが、そうなると3Dデータの流通をどうコントロールするのかという話になります。yomoyomoさんが「3Dプリンタに DRM をかけて物騒なものを作れなくしろという声もいずれ出てくるのでは」と指摘されていて、コリィ・ドクトロウさんの文章も紹介されていますが、恐らく(規制が上手くゆくかどうかは別にして)そんな動きが早晩出てくるのでしょう……
と思ったら米国で特許を取ってました:
■ Übertroll firm awarded patent on adding DRM to 3D printing (The Register)
マイクロソフトの前CTO、ネイサン・ミアボルド氏が設立したIntellectual Ventures社の一部門が、3DプリンタにDRMを導入する技術で米特許商標局から特許を認められたとのこと。同じくyomoyomoさんのブログによれば、ネイサン・ミアボルド氏はなんかおかしな料理本に取り組んでいたようですが、再びこんな重要な話に絡んでくるとは。
Under the system described in the patent, files containing plans for printed objects would be encased in a digital envelope that would check if the original designer had either given permission for the plans to be used or been paid for their product. Software to handle this would be embedded in 3D printers to make sure they couldn't produce unauthorized copies.
特許で解説されているシステムによると、プリンタで製造される物体の設計図を含むファイルはデジタルの封筒で覆われ、オリジナルの設計者が利用を許可しているかどうか、料金が支払われているかどうかといったチェックが行われる。この処理を行うソフトは3Dプリンタに組み込まれ、許可されていないコピーを製造できないようにする。
3Dプリンタのメーカーがこの技術を組み込むかどうか、また設計図ファイルの製作者がDRMをかけるかどうかはもちろん彼らの判断に任されています。しかし3Dプリンタの様々な商用利用(フィギュアの3Dデータを自作して売るとか)が検討されていることを考えると、当然ながらDRMをかける・かけられる環境を整備するという方向に向かうのでしょう。発明された当初は、ギークと呼ばれるような人々が「自由だ!革命だ!」と叫びながら自在に使いこなし、しばらくすると大企業が乗り込んで「制約があった方がいいだろ?安全だしビジネスにもなるし」と言って規制でガチガチにする(でも一般人から見ると「平和な」環境が到来する)――というお決まりのパターンが繰り返されるだけの話かもしれません。
今回の技術について、もう少し詳しい議論がTechnology Reviewにも:
■ Nathan Myhrvold's Cunning Plan to Prevent 3-D Printer Piracy (Technology Review)
"You load a file into your printer, then your printer checks to make sure it has the rights to make the object, to make it out of what material, how many times, and so on,” says Michael Weinberg, a staff lawyer at the nonprofit Public Knowledge, who reviewed the patent at the request of Technology Review. “It’s a very broad patent.”
Technology Reviewの要請で今回の特許をレビューした、Michael Weinberg氏(非営利団体Public Knowledgeの弁護士)は次のように述べている。「(設計図となる)ファイルをプリンタにセットすると、製造する権利があるか、どんな素材を使って良いか、何回製造して良いかといった確認がプリンタの側で行われます。非常に広範な特許です。」
そうか、モデルガンなどの話だと、同じデータでも強度が出る素材で作られるとヤバいので「特定のプラスチックがセットされてないとダメ」といった確認も必要になるわけですね。またこの特許では、いわゆる「製造」だけでなくダイカストや塗装といった作業も対象にされているとのこと。自分のiPhoneの裏面に大好きなキャラをエングレーブする、といった話も規制される可能性があると。
とりあえずDRMをかける技術や仕組みは既に登場したわけで、あとは政府、3Dプリンタのメーカー、そして3Dプリンタによって打撃をこうむる可能性のある業界がどんな意識で行動を起こすかになります。「どんな家庭にも3Dプリンタがある」という時代はもう少し先になりそうですが、冒頭のような「銃を製造しよう」という動きがあることや、過去の音楽業界におけるDRMをめぐるゴタゴタなどの記憶から、規制自体の議論は少し早く本格化するかもしれません。
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