ロボットかモンスターが出てこなければ映画じゃない。故にパシフィック・リム最高!(祝・続編決定!)な僕ですが、ごくまれに様々な理由で恋愛映画を観ることもあります。先日、クロエ・グレース・モレッツ主演の『イフ・アイ・ステイ』の試写会にお邪魔することができ、10月11日の公開に先駆けて観てきました。
主人公である17歳の少女・ミアが、ある雪の日に家族とドライブしていた時、突然の事故に巻き込まれ――というシチュエーションから始まる物語。その後、ミアがこれまでの人生を振り返るという形で話が進みます。ネタバレ回避のためにあらすじはここまでにしておきますが、推理小説のようにプロットが命!という作品ではないので、詳しい内容を知ってしまったよという方でも楽しめると思います。
念のため、ここではできる限り物語の詳細には踏み込みません。
僕が恋愛映画を観ないのは、10代の輝かしい時期を(朽ち果てたオッサンになったいまもだけど)モテずに過ごしたので「カップルの幸せな姿なんて見られっか!」という正当な理由によるものですが、この作品は少し空気が違いました。いや、設定だけ見ると共感が難しそうなんですよ。ミアにはチェロの才能があるし、彼氏のアダムはいままさにブレイクしようとしているロックミュージシャンだし(しかも彼の方から告白してくれる)、家族はそんな2人に理解があって、しきりに盛り上げてくれるし――ちくしょう!そんなに順調なわけあるか!!
しかし先ほど触れたように、この物語は「事故に遭った少女がこれまでを振り返る」という設定で描かれます。つまりどんなに幸せな場面であっても、いや幸せな場面であればあるほど、二度と返ることのない夢として辛く心にのしかかるわけで。幸せなのに、どこか重苦しいというやるせなさが漂います。
また過去の幸せだった時期の中でも、主人公はその幸せを実感できていない、という描かれ方をしています。彼氏とは些細なことでぶつかるし、というより初恋なのでつきあい方が分からないし、家族にも意地を張ってしまうし、将来がどうなるかなんて分からないし――事故に遭って、改めてこれまでのことを思い出してみることで、自分が本当は何を手にしていたのかを実感できるという。その意味で、画面で描かれる「幸せだけれど痛いほどに悲しい」という空気は、ミア自身が同時に体験しているものと言えると思います。
やっと気づいた幸せが、もうそこにはない。それでも先へ進むという決断を、仮に下すのであれば、その決断はどこから生まれてくるのか。この映画のテーマのひとつは、そんなところにあるのではと感じました。といっても、「辛いけど前に進もうぜ!てか進めよ!」というような説教映画ではありません。「辛いのなら休むことだって罪ではない」というメッセージも、同時に語られています。物語のラストでミアが下す「決断」も、本当に正しかったのかどうか、はっきり語られることもありません。「決断」が正しかったのかどうかより、どんな思いで決断を下したのか、あるいは下すのか、その辺りの情景に考えさせられるものがありました(ネタバレしないでおきますが、別の登場人物も重要な決断を下していて、個人的にはそちらの方も非常に胸に迫るものがありました)。
というわけで『イフ・アイ・ステイ』、彼氏を見て「ふざけんな!なんだこの完璧超人は!もげろ!」とか、「なにがピチカートだ!フォルテシモとかふざけんな!」とか、まぁ感じてしまうことがあったことも事実ですが。しかし食わず嫌いせずに観ておいて良かった、と思える作品でした。
あと月並みですが、ストーリーがストーリーだけに音楽が素晴らしかったです。サントラ買おっと。
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