iPhone 用にサードパーティーが開発したアプリケーション"Podcaster"(名前から想像できるように、ポッドキャスト用のクライアントソフト)が App Store での販売を認められなかったことで、波紋が広がっているようです:
■ Apple blocks competitive products from iPhone App Store--surprised? (CNET)
Podcaster が認められなかった理由―― Apple の担当者は「iTunes が既に podcast 配信機能を備えているから」と解説しています。つまり「Apple が展開する製品と競合するものは出すな」というわけですね。Apple が企業として、自社と競合する製品に出てきて欲しくないというのは分かる――しかし競争を排除するために、プラットフォームの運用を恣意的に行うというのはいかがなものか?と非難されています。
あの Dave Winer 氏も、こんなコメントを:
■ Why iPhone is an unreliable platform (Scripting News)
I wouldn't invest in or develop an iPhone app because Apple could decide not to approve it, and if they don't approve it you can't sell it. You can't even give it away. You don't find out if you've been approved until the last step, after you've fully invested, so you could lose, totally, if Apple says no.
At first this might have seemed ridiculous if you didn't know Apple, you might assume they'd only keep out apps that somehow damaged the iPhone, but it hasn't turned out that way.
私は iPhone のアプリケーションを開発したり、それに投資することはないだろう。なぜなら、開発したアプリは Apple に否認されるかもしれず、否認されたアプリは販売することができない。誰かにあげることもできない。承認を得られるかどうかは、最後の瞬間まで分からない。それは全ての投資が終わった後なので、Apple が「No」と言えば、全てを失うかもしれないのだ。
(中略)
Thirteen years ago I wrote a piece entitled What is a Platform? Perhaps it should be amended to say that if you need the approval of the platform vendor to ship an app, then it isn't a platform. It's an integrity thing. The idea that it's a platform should mean no individual or company has the power to turn you off.
13年前、私は「プラットフォームとは何か?」という記事を書いた。恐らくそれはこう修正されるべきだろう:「もし開発したプリケーションを出荷するのにプラットフォーム・ベンダーの承認が必要だとしたら、それはプラットフォームではない。これは欠かせない条件だ。あるものがプラットフォームだというなら、ある個人や企業の判断によって、誰かが閉め出されるようなことがあってはならない。」
少々厳しすぎるような気もしますが、今回否定された理由が公序良俗に反するからというものではなく、単に「Apple と競合するアプリだったから」ということで、Dave Winer 氏と同じ意見の開発者は少なくないようです。"I Am Rich"のケースとは異なり、Podcaster が普通に実用的なソフトだったことも反発を招いている一因のよう。
実際、「これは大丈夫だろう」と思って大きな時間・資金を投下したアプリが売れないとなれば、開発者は大きな損失を抱えることとなります。また首尾良く承認されたとしても、もしそれが大ヒットしたら、Apple が「同じようなアプリを提供したい」という欲求に駆られるかもしれません(Safari や iTunes の一機能としてしまう、ということも考えられるでしょう)。そして Apple 版の類似アプリが登場した時点で、「競合するから」という理由で自社製品の販売許可が取り消されてしまったら……まさかそこまでえげつない運用はしないだろう、とは思いますが、今回の Podcaster 否定は開発者に不安を抱かせるのに十分な効果があると思います。
ただ Apple にしても、開発者の離反を招くことは望んでいないはず。「恣意的な運用」と見なされないルールの確立ができるのかどうか、ここしばらくの Apple の立ち回り方に注目すべきかもしれません。しかしキルスイッチの件でも不信感を招いてるし、大丈夫なのかなー。
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