最近ネット上では、及川政治が話題になっているようです。どのような問題かというと、元雑誌ターザン編集長の及川なる人物が、江ノ電バスとトラブルになり、その顛末を自身のブログで公開、これが非常に口汚く江ノ電を罵る内容だったため「2ちゃんねる」で話題となり、それを知った及川氏がさらにブログ内で反論、結局このブログは現在閉鎖されてしまっている、というものです。
この事件、テクノラティ・ジャパンの「最も検索されている話題」で最近ずっと1位を独占していました。ネット界で相当話題になっているんだなと思いきや、実はブログに書込みをしている人は少ないんですね(本日午後4時現在のテクノラティ検索結果で、ヒットするのは59件のみ)。kizasiで検索をかけても、「及川政治」というキーワードを含む記事の数は、減少傾向にあるという結果が出ています(こちらで結果を確認できます)。
同じ人物が何回もテクノラティで検索をかけているために、「最も検索されている話題」で常にトップなのだ、という解釈ができるかもしれません。しかし検索件数が多い=検索する人が多いということを示していると仮定すると、情報発信者が少ないのに話題が急速な勢いで広まっている(viralな話題)ということになります。
先日、Seth's Blogを見ていたら、ちょうどviralが発生する条件が示されていました。
What makes an idea viral? (Seth Godin's Blog)
それによると、ある思想や話題がviralとなるためには、まず情報発信者が:
- 発信する情報の内容を理解していること
- 情報発信したいという欲求を持っていること
- 情報発信により、評判が上がる・収入を得るなどといった利益を得れるか、心の平静を得ることができること
- 情報発信に必要な労力よりも情報発信による利益の方が上回っていること
という条件が必要になり、そして情報の受信者が:
- 第1印象で、さらによく知りたいという気持ちになること
- 受信した情報を理解できる下地があること
- 情報発信者を信頼していること
という条件が必要になるそうです。
これを及川さんの話題にあてはめると、情報発信者は何らかの利益を得ていることになります。今回は及川さんが2ちゃんねらーを激しく罵倒していますから、情報発信者のモチベーションは「怒り」で、情報発信により、「鬱憤を発散する」もしくは「話題を大きくすることで、及川氏に対する追求が進む」という利益を得ている、という解釈が成り立つのではないでしょうか。しかし僕のように、気にはなっても情報発信しようというほど怒る・嫌な気分になるという人は少ないでしょう。この点が、情報発信者が少ないという結果につながっているのだと思います。
一方、テクノラティで検索する人が多いということは、受信した情報をもっと知りたいという人が多い、ということになります。これはSethが示す受信者の条件(1)に当てはまるでしょう。僕は「最も検索されている話題」に表示されているのを見て、「及川政治っていったい何者なんだ?」という気持ちになりました。特にこれまで耳にしたことのない名前ですし、それが「もっとこの話題について知りたい」という気持ちに人々をさせているのでしょう(同様に「最も検索されている話題」に堂本剛がランクインしていますが、僕は興味を引かれませんでした---ちなみに「堂本剛」で検索すると1万2千件近くの記事がヒットします)。
ということで、及川政治問題は、送信側条件<受信側条件、という構造でviralが発生しているのではないでしょうか。現実世界でクチコミが進むためには、送信者が多いことが絶対の条件になりますが、時間と空間を気にせず情報発信できるネットの世界では、送信者の数は絶対ではなく、受信側条件を満たすことでも話題は広まっていくとうことを、この問題は示していると思います。
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