今週号のAERAの記事「したい結婚 したくない結婚」によると、結婚前にお互いの価値観が一致しているかを確かめるカップルが増えているらしいとか。例えば金銭感覚や子供を持つことに対する考え方といった大きな部分から、「実家に帰る回数」や「外食の回数」といった細かい部分まで、合うことを確認しないと結婚に踏み切らないそうです。
確かに「子供を持つか持たないか」といった大きな価値観が一致していないと、結婚生活は長くは続きません。しかし「1回の外食で使う金額」まで価値観が一致する相手じゃないと結婚しない、というのもどうなんでしょう。「セロリ」(山崎まさよしの曲)じゃないけど、育ってきた環境が違えば、価値観が異なるのは仕方のないこと。むしろ価値観の違いを楽しんで、乗り越えるくらいの気持ちじゃないと、どんな相手と結婚してもダメになってしまうのでは・・・AERAの記事を読んで、そんな余計なおせっかいを感じました。
話は変わって、2月8日の日経産業新聞に、アメリカの企業Gracenoteが開発した音楽推薦エンジン「Discover」の記事が掲載されていました:
米グレースノート、音楽推薦エンジン「ディスカバー」を開発(IT-PLUS)
ちなみにDiscoverについては、以下の記事に詳しく解説されています:
Gracenote、楽曲を自動で推薦する「Gracenote Discover」をデモ(BroadBand Watch)
Discoverに限らず、何かのレコメンデーションを行うサービスというのは、最近では珍しくありません。Amazonの例を出すまでもなく、書籍や音楽、ゲームなど、ユーザーの過去の行動から似たようなコンテンツを探し出して提案するサービスが流行りつつあることが、日経産業新聞の記事で指摘されていました。
価値観が一致する相手と結婚したいという気持ちとレコメンデーションエンジン、全く違う現象ですが、「好きなものだけに触れようとする欲求」という根幹は一緒なのではないでしょうか。強い言葉で表現すれば、「異質なものを排除する」という傾向が強まっているような気がします。AERAの記事では、結婚紹介所のマッチングシステム(詳細な質問を登録者に投げかけ、価値観が一致する候補者を選ぶ仕組み)が紹介されていたのですが、マッチングシステムやレコメンデーションエンジンといったIT技術の発達により、「異質なものの排除」はますます簡単になっています。
こんな時だからこそ、あえて「アンチ・レコメンデーション」という発想を取り入れるのはどうでしょうか。自分の普段の生活からは全く考えられない、完全に異質なものと遭遇する機会を作る・・・そんな発想です。過去の行動履歴から、似たようなコンテンツを探す技術があるのですから、その逆に「過去の行動とは完全に異なるコンテンツを探す」ことも可能なはずです。名付けて「アンチ・レコメンデーションエンジン」。
「この本を買ったユーザーは、こんな本を一緒に買うことは絶対にありません:」
・・・こんな風に、アンチ・レコメンデーションエンジンが提案するものは、正直いってほとんど使えないかもしれません。ブランド好きなOLにユニクロのフリースを、Beth Nielsen ChapmanのファンにPrinceを、「エルメス」に「電車男」を紹介してしまうでしょう。しかしその中から、何か全く新しい感動や、価値が生まれる可能性もあるはずです。
自分に一致する価値観ではなく、全く新しい価値観を「推薦」してくれるアンチ・レコメンデーションエンジン、誰かが作ってくれるのでは・・・と(ほんの少し)信じています。
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