以前、日経MJにこんな記事が載っていました:
店長がうっかり落として、耳が欠けてしまった猫の貯金箱。普通は傷物として処分するところを、「私は耳をケガした猫です。おかげさまで元気になりました。誰か可愛がってくださる方を探しています」とPOPを書いて売り出したところ、すぐに売れてしまった。
この記事を読んだときは、なるほど工夫したなぐらいにしか思わなかったのですが、このアイデアを実践してみた人の話が今日の日経MJに載っていました:
■ 招客招福の法則104「素直さこそ商売伸ばす糧に」(日経流通新聞 2006年3月22日第3面)
それによると、件の「耳の欠けた猫」の話を読んだ布団店主が、キャンセルで売れ残った布団についてDMを作成したとのこと。見出しは「私は羽毛ふとんです。迷子になっちゃいました」というもので、本文には「羽毛ふとんが1つ迷子になっています。実は予約を頂いていた羽毛ふとんがお客さまの都合でキャンセルになりました。こんな私(羽毛ふとん)ですが、可愛がって大切に使ってくださる方を探しています・・」と書いたそうです。するとすぐに電話があり、この布団は売れてしまったとのこと。
この2つの例、「擬人化マーケティング」と言ったところでしょうか。「耳が欠けている」「売れ残り品である」という事実だけでは、それは商品を差別化する特徴であっても、お客に欲しいと思わせる要素にはなりません。擬人化という工夫があったからこそ、欠陥が「愛すべき特徴」と見なされるようになり、お客のインサイトに響いたのではないでしょうか。
ニワンゴの携帯メール検索サービスなんかも、この「擬人化」を活用している例だと思います。携帯メール検索(メールの本文にキーワードを記入し、指定されたアドレスに送信すると、結果がメールで返ってくる)では検索結果がゼロ件だと、「ごめんねメール」が返ってきます(「検索できなかった」旨のエラーメッセージを面白くしたもの)。普通なら「検索できなかったのか、使えねー」となるところが、「まあ許してやるか」となるわけです(この辺の反応には個人差があると思いますが・・・)。そう考えると、この「擬人化マーケティング」という手法、意外と応用範囲が広いのかもしれません。
ただ重大な障害に対しても「僕は○○。ときどきデータを忘れちゃうんだ!」「アタシ○○。シャットダウンが多いけど許して!」とやれば逆効果になることは目に見えていますから、あくまでも「愛すべき特徴」にしか適応できないテクニックですが。先日Jeeves執事もAskを解雇されてしまいましたし(参考記事:姿を消した Jeeves 執事、Ask.jp が「Web2.0 時代の検索サイト」目指しリニューアル )、擬人化で効果を出すにはそれなりのスキルが必要なのでしょう。
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