「コンテンツばら売りの時代」と言われます。iTunesは音楽をアルバム単位から曲単位で販売することを可能にし、米Amazonは書籍をページごとに売るサービスを立ち上げました。こういった「ばら売り」の動きを加速させそうなサービスが、今朝の日経産業新聞に載っていました:
■ メディア各社の記事・写真など 米モチラ、ばら売り仲介 -- 著作権の手続き 簡素化(日経産業新聞 2006年4月28日 第2面)
サービスを提供しているのはモチラ(Mochila)というベンチャー企業で、"The Media Marketplace"を標榜しています:
B2Bのサービスなのですが、興味深い内容です。メディア企業に対して、コンテンツ売買を行うオンライン・マーケットプレイスを提供するというもの。売り手は掲載可能期間・掲載メディアの種類など、きめ細かい条件を指定してコンテンツを登録し、買い手は必要なコンテンツの種類と用途などを指定して検索。ECサイトと同じイメージで、欲しいコンテンツを「買物カート」に登録・決済し、コンテンツをダウンロードして使用するという仕組みになっているとのこと。モチラは成立した売買の金額の一定額を手数料として受け取る、というビジネスモデルになっています。またコンテンツと広告をセットにすることで、売価をゼロにするという販売方法も可能だそうです。
これまでメディア間のコンテンツ取引では、著作権を持つ企業に許可を得たり、料金を支払うなど煩雑な手続きが必要だったものが、モチラのサービスによって簡略化されるとのこと。利用にはユーザー登録が必要ですが、販売後のコンテンツ不正使用を防ぐために、メディアとして信用があることといった条件を設けているそうです。
そんなわけで、すぐにはB2Cのサービスにならなそうですが、もしかしたらC2Bのモデルに展開できるかもしれませんね。つまりコンテンツ提供側には一般人も参加可能にして、自分の好きな条件・価格で売れるようにしておくわけです。買い手側に立つメディア企業はコンテンツの信頼性を判断しなければなりませんが、レビュー機能といった売り手を評価する仕組みを設置しておくことで、ある程度安心感を与えることができるのではないでしょうか。また一般人を参加させることで、今日のブログに見られるような速報性・多様性・ローカル性などの「既存のメディアがカバーできない性質」を持った情報も流通させることができるでしょう。
またテキスト系のコンテンツだけではなく、映像系コンテンツまで発展させることができそうですね(既に取引対象のコンテンツを英語以外の言語、動画、音声に広げることを計画中とのこと)。例えば現在でも「視聴者の○○さんが撮影した火事の映像」といった具合に、ニュース番組で一般人が撮影した映像が流れることがあります。このようなケースなら、正誤の検証も比較的容易ですから、C2Bのモデルを導入しやすいと思います。
ちなみにモチラは日本でのサービス展開も2007年をメドに考えていて、既に複数社から打診を受けているとのこと。特に動画系のコンテンツまで対象とするとなると、日本では著作権などの権利関係をクリアするのがかなり問題となると思いますが、ぜひ新しい可能性として成功して欲しいと思います。
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