雑誌『PEN』の10月15日号に載っていたのですが、ローマのナヴォーナ広場に「パスクィーノ像」という像があるそうです(こちらのページで写真付きで紹介されています)。16世紀、教皇を皮肉った風刺詩を庶民がこの像の台座に貼ったことから、パスクィーノ像は市民の「意見箱」として存在することとなり、現在でも様々な政治批判を掲載したビラが貼られているのだとか。最近ではこの像のコピーが登場して、同じく「意見箱」として使われているのだそうです。
この話を思い出したのは、実はこのニュースを目にして。
■ YouTubeの利用者、米で急減 日本でも横ばいに (ITmedia)
文字通り、YouTube の利用者が減少しているというニュース(2006年9月のユーザー数調査)。YouTube と言えば最近 Google に買収されるなど、景気の良い話が続いていましたが、水を差すようなデータが現れてきたようです。
減少の理由は不明なのですが、つい先日こんなニュースもありました:
■ ユーチューブ、3万ファイル削除・日本の放送局要請 (NIKKEI NET)
これは10月の話なので ITmedia の内容には直接関係がないのですが、その前から YouTube は問題のあるファイルを削除する姿勢を強めていたのかもしれません。仮説に過ぎませんが、「著作権的に問題のあるファイル=みんなが見たいファイル」を削除したために、ユーザー数の減少を招いているのではないかと想像します。
「パスクィーノ像」は「政治批判の意見が読める場所」として認知され、400年に渡って市民の意見が集まる場(CGM?)として使われてきました。そのような場所であれば、たとえ時の施政者が張り紙を取り締まったとしても、訪れる人を途絶えさせることはできないでしょう。一方で YouTube は、「面白いコンテンツが集まる場所/お面白いコンテンツをアップロードしたい場所」として認知されているでしょうか?一時的な違法ファイルの大量削除を乗り越え、人が集まる場所として存在し続けることができるでしょうか。
YouTube は単に「動画ファイルのアップロード場所」として使われているに過ぎない、という意見も多いようです。Google の買収によって違法コンテンツ削除の動きが強まるとなると、今後もユーザー数減少のリスクは続くのでしょう。YouTube がコンテンツの集客力だけでなく、サイト自身の集客力によってアクセスの上昇、および「違法ではない」面白いコンテンツの収集を続けられるのかどうか -- すなわち「場所」の価値を高められるのかどうか、正念場に差し掛かっているのかもしれませんね。
コメント