日経ビジネス最新号(2007年9月10日号)の特集は「顧客を裏切る」。顧客の声に耳を傾けているばかりでは、次のヒット商品は生まれない ― という内容(ちなみにこの主張は『なぜ、予想は裏切られたのか』という本の内容に近いです。取り上げている事例も一部かぶっているし)なのですが、そもそも顧客の声を知るというのは非常に難しいことですよね。売上などのデータだけに頼るのではなく、直接ユーザーや消費者と対話できればいいのですが、面と向かっての対話でもこんな問題があるようです:
■ Discovering "Unk-Unks" (MIT Sloan Management Review, Summer 2007)
新しいアイデアを実行に移す前に、「自分がまだ知らないこと(unknown-unknowns)をどうやって発見するか」がテーマの論文。この中で、「例えこれまで他人の意見に耳を傾けてきたと思っても、相手から十分なフィードバックを受けてこなかった可能性がある」として、4つの誤った態度が示されています:
1. 自分の熱意を示してしまう
「このアイデアはすばらしい!」という態度で臨んでしまうと、相手は反論しづらくなってしまうもの。熱意を示すのは何かを売り込む際にはいいが、フィードバックを得るときにはマイナスとなる。
2. 自分のアイデアを中心に話してしまう
1. に似ていますが、自信のあるアイデアについてインタビューする場合、ついつい「自分の考えではこうでこうで……」と説明してしまいがち。そうした態度では、ユーザーの隠れたニーズを引き出すことはできない。また実は相手が素晴らしい代替案を持っていたとしても、それを話す機会がなくなってしまう。
3. 「誘導尋問」してしまう
そのつもりはなくても、「誘導尋問」的な質問をしてしまうことがある。例えば、「この方法によって時間が短縮されると思いますか?」と尋ねられれば、速さについて考えていなかった場合でも、相手は「はい」と同意してしまうもの。この辺はよく世論調査のワナ(アンケート実施者が望むような結果が出るよう、質問文が操作されている)として指摘されることですね。
4. 「はい」「いいえ」で答えられる質問をしてしまう
これはよく言われることですよね。「はい」「いいえ」で答えられる質問は、それで会話が終わってしまいます。また「場合によってはハイだけど、イイエに近い意見かなぁ」という白黒つかない状況を、無理やり分類してしまいます。往々にして、そんな曖昧な状況に真実がひそんでいるもの。
……以上の4つ。確かに1、2はやってしまいがちな間違いですよね。「これは画期的なアイデアだ!」と思うと、ついつい相手に熱心に説明してしまい、それを叩き台にして考えてしまう、と。それはフィードバックを得るための行為というより、相手に「うまく行くよ」と言わせて、安心感を得るための行為という方が近いのかもしれません。それでは自分のアイデアを改善することも、相手が持っているかもしれない素晴らしい代替案のアイデアを得ることも不可能になってしまうわけですね。
そういえば今日、Sony の「Rolly」が正式発表されました。事前にリーク(?)されていた情報の通り、音楽に合わせて動き回るミュージックプレーヤーというもの。残念ながら、ブログ上では「なんじゃこりゃ?」「どう楽しめばいいか分からない」という意見が多い様子。これが果たして「顧客の裏切って大ヒットする製品」になのか、はたまた「過度の自信によって周囲のフィードバックを妨げてしまった結果」なのか、こんどの水曜日(12日)に発表会があるのでちょっと触れてきたいと思います。
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