「顔の位置を自動的に認識する」というのは最近のデジカメなら普通の機能になりました。さらに一部のデジカメのように、「笑顔を認識する」というのも可能になっているわけですが、そんな顔/表情認識を教育に応用しようというアイデアがあるとのこと:
■ Computer Scientist Turns His Face Into A Remote Control That Speeds And Slows Video Playback (ScienceDaily)
UC San Diego の博士課程に在籍中の Jacob Whitehill さんが行っている研究について。顔認識と教育がどう結びつくんだ?と思われるかもしれませんが、聞いてしまえばごく簡単な話です(もちろん良い意味で)。生徒の表情をリアルタイムで認識し、そこから理解度合いを読み取って、教える内容を変化させようというもの。要は普通の人間の先生なら誰でもやっている(はずの)、「生徒の表情を見て教え方を変える」というのを機械的に可能にしよう、という話ですね。
で、記事で紹介されているのはこの研究の一環で開発された技術。ビデオレクチャーを流す際、生徒の表情をリアルタイムで読み取り、理解度に応じてビデオのスピードを変えるというものだそうです(それで記事のタイトルが「顔をリモコンにして、再生速度を変える」となっているわけですね)。
こちらはそのリモコン技術ではないのですが、実際に授業を受けている人物の表情を読み取っている様子の動画です:
動画の最後で「表情から推測される難解度」と「受講者本人が申告した難解度」がグラフ上に描かれていますが、確かにほぼ一致しています。「いまの分かった?」と聞かれても、いろいろな理由で「分かりません」と素直に言える生徒ばかりではないでしょうから、表情から機械的に判断した方が正確だという状況も多いかもしれません。
この技術を応用すれば、将来的には「表情に応じてリアルタイムに内容を変える」「次に流すビデオを決める」といったこともできそうですね。また逆に、人間の教師が自分の教え方を考える際のフィードバックとしても使えそう。あるいは大量の生徒から表情データを取得することができれば、「この部分が分からなかった人は、このビデオを観ると理解度が上がっています」のようなサジェスチョンを与えてくれるツールにも発展できるかもしれない……などと様々な妄想をふくらませてしまいました。もちろんあらゆる問題が機械的に解決できるわけではありませんが、進歩が楽しみなアイデアだと思います。
< 追記 >
おっ、ITmedia でも取り上げられていたのを教えていただきました:
■ 「表情認識」でリモコン制御が可能に (ITmedia News)
僕ならタイトルは「ロボット教師、実現に一歩近づく」ぐらい煽ったかも(笑)。
< 追記その2 >
同じ発想で、こんな話もあるようです:
■ Software to students: 'I feel your pain' (eSchool News)
こちらは UMass (マサチューセッツ大学)の研究者らの取り組み。生徒が授業中に混乱していたり、フラストレーションを感じたりしているのをセンサー(座席やマウス、生徒の手首等に仕掛けられ、肌の状態を監視するとのこと)で察知・数値化して把握するというもの。またここでもカメラによる表情認識が活用されるようです。テスト以外の方法で生徒の理解度を探る、という点で同じ方向性の研究ですね。
まぁ対面型の授業というものが無くなることはないでしょうが、未来の学校や学習塾では、生徒が一人一人モニターに向かって内容(難易度)の異なるレクチャーを受ける……という姿が出現するのかもしれません。あるいは企業で研修に用いられて、「何だかオレの画面だけさっきからずーっと変わらないなぁ」なんてことになったりして。
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