以前から「Google 版 Wikipedia」と称されていたサービス"knol"が一般公開されました:
■ Knol is open to everyone (Official Google Blog)
ちなみに以前の紹介記事はこちら:
■ Google 版 Wikipedia 「Knol」 発表
■ Knol に乗る?
こちらがトップページ。昨年末からクローズドのベータテストが行われていただけあって、既に数多くの記事が投稿されており、それに対する評価も付いています。どんな記事が書けるのか、はいくつか実物を見ていただいた方が速いでしょう:
■ How to Backpack
■ Barbecue Sauces
■ Tooth Pain
現状、医療系の記事が多いようです。当然狙って作り出された状況でしょうが、医学・科学系であれば専門家が多く、社会・人文系のトピックよりも論争が生まれにくいという判断かもしれません。
で、いくつか気づいたことを五月雨式に。まず大きな点としては、日本語もちゃんと通りました:
ベータテスト中は英語以外の記事は作成されなかったようですが、今後は日本語による投稿も盛んに行われていくかもしれません。
次に編集の仕組みに関して。以前の記事で「記事は著者本人しか編集できないようだ」と書きましたが、公開されたバージョンでは、複数人による編集も行えるようになっています。しかも
- 誰でも編集可能・編集内容を即時反映(いわゆる普通の Wiki と同じイメージ)
- 誰でも編集可能・反映はオーナーが許可した場合のみ
- オーナーとオーナーが指定した著者のみ編集可能
の3種類の設定が可能。また公開/非公開を設定できるので、何人かの仲間内で記事を作成・完成型になってから一般公開、というようなプロセスを取ることも可能です。
もう1つ面白いのは、これは以前から報じられていたことですが「レビュー」という概念があること。全ての記事に対してレビューを書くことができるため、例えば著者として招待されなかった記事でも、反論コメント等を書くことができます(当然別ページにはなりますが)。また「この記事をレビューしてくれ」とオーナー/著者の側から誰かに依頼することが可能。しかもこの場合、未公開の記事でも特別に閲覧が許可される(レビューを依頼された当人のみ)ので、「未公開の状態で編集作業を行う>公開前に識者にレビューしてもらう>識者による同意/反論コメントが既に付いている状態で一般公開」という流れを取ることもできるようになっています。
こうして見ると、「Google 版 Wikipedia」というよりは、「オンライン学術論文作成プラットフォーム」(?)という感じ。Wiki を手軽に編集する、というのではなくて、何人かで集まって1つの論文を作り上げる/人々の評価を仰ぐ、という感じかなぁと思います。
ということで、30分ほどざっと遊んでみただけの感想ですが、Wikipedia と直接競合しそうにないような気がします。仕組みやアプローチがまったく違うのは上記の通りですし、Wikipedia に書き込む人=knol に書き込む人、とはならないような。ユーザーも使い分けをするか、あるいは好みが分かれて「Wikipedia だけ使う人」「knol だけ使う人」という傾向が生まれるかもしれません。なので少なくとも当面の間は、knol によって Wikipedia の勢力が衰えるなどという状況は発生しないように思いますが……しかし Google の検索結果のトップに「knol 内での検索結果」のようなコーナーが表示されるようになったら危険かな。
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