技術評論社の方から本を3冊いただいたのですが、その中の1つ『問題は「数字センス」で8割解決する』を読了したので書評っぽいことを。
この本、「会計本は読んだ。で、目の前の仕事にどう役立つの?……数字を味方にすれば、仕事の問題はもっと解決しやすくなる!」という売り文句が書かれているように、基本的には仕事術という観点で書かれたもの。会計的な問題を取り上げるだけでなく、テストやスケジューリングの重要性などにも話が及びます。そういった点ももちろん有益なのですが、どちらかと言うと社会人1年生向けといった感じで、ネットでライフハック系の記事を日々読まれている方には新鮮味は少ないかなと感じました。
一方でこの本、メディアリテラシーを養うものとして位置付けても良いかもしれません。自分自身、よく騙されてしまうのですが、数字は決して客観的なものではありません。例えば、この本でもサンプルとして登場するのですが、
負債が20兆円もある会社
と言われてしまうと、よっぽど経営危機に瀕している会社じゃないかと感じてしまいます。しかし数字に限らず、あらゆる情報は正しいコンテクストに置いて考えなければ正しく理解できないわけで、上の例で言えば資産や売上高等にも目を向けなければなりません。しかし「負債20兆円!」と言われると「具体的な数字もあるし、経営危機というのは正しいのかな」と感じてしまうのが数字の魔力、といったところでしょうか。
ちなみにこの「負債20兆円の会社」とはトヨタのことであり、三菱自動車と比較して以下のように解説されています:
マスコミで業績の悪い企業や倒産した企業を取り上げるときは、負債総額××億円というように、決算書の数字の中にあるマイナスイメージの数字を取り上げます。そのため三菱自動車の数字が紹介されるときには、負債1兆4703億円、支払利息208億円などという数字が紹介されることが多いようです。
これに対して、優良企業を取りあげるときは、資産××億円、売上××億円、利益××億円というような、決算書の数字の中でもプラスイメージの数字を取りあげます。そのためトヨタ自動車の数字が紹介されるときには、資産33兆円、売上24兆円、当期純利益1兆6440億円というような数字がおもに紹介されます。
そうそう、ニュースなんかを見ているとまさしくこういった「操作」が行われていますよね。別に数字をいじったのではないのだから「操作」という言葉はちょっと、と思われるかもしれませんが、自説に有利な数字だけを、自説に有利なような見せ方で提示したという点では十分恣意的です。上の例は分かりやすいものですが、もっと巧妙に行われているケースも多いでしょう。
こんな風に、本書では様々な「数字を正しく読む力」が紹介される一方で、「自分に有利なように数字を使う力」も解説されています(例えば映画のように、「○○は全米初日記録No.1達成!」といった「No.1になる数字」を無理矢理でも引っ張ってこよう、など)。数字でダマすか、数字でダマされないようにするか。使い方は読者次第(?)ですが、どちらにせよ学んだことを実践してみたくなる(そして実践しなければ意味がない)一冊だと思います。
空気を読めないと駄目でしょうw
数字を読む?
投稿情報: | 2008/10/10 21:21