これはまた論議を呼びそうな調査結果が。イスラエルの心理学者チームが、ウィキペディアン(ウィキペディア上でアクティブな活動を行うユーザーたち)は閉鎖的で、気むずかしい人物である傾向が強いとの研究を発表したそうです:
■ Psychologist finds Wikipedians grumpy and closed-minded (New Scientist)
イスラエルの研究者、Yair Amichai-Hamburger と心理学者チームによる調査結果について。最初に断っておくと、あくまでもイスラエル国内を対象に行われた研究で、被験者もそれほど多くはありません。ウィキペディアの編集を行っている人々69名を対象に、様々な人格を測定する調査を行い、それを学生70名の調査結果と比較したとのこと。その結果、
As Amichai-Hamburger expected, the Wikipedians were more comfortable online. "They feel the internet is a more meaningful place to them," he says. But to his surprise, although Wikipedia is founded on the notion of openly sharing and collecting knowledge as a community, they scored low on agreeableness and openness.
"Wikipedia in a way demonstrates the spirit of the internet," Amichai-Hamburger says. "People contribute without any financial reward."
Amichai-Hamburger speculates that rather than contributing altruistically, Wikipedians give take part because they struggle to express themselves in real-world social situations. "They are compensating," he suggests. "It is their way to have a voice in this world."
Amichai-Hamburger の予想通り、ウィキペディアンはオンライン上でより安心感を感じていた。「彼らは自分にとって、インターネットがより有意義な場所だと感じている」と彼は述べている。しかし驚いたことに、ウィキペディアは「コミュニティとして知識をオープンに共有・修正する」という概念に基づいているにもかかわらず、ウィキペディアンの同調性と開放性は低かった。
「ウィキペディアはある意味、インターネットの精神を表すものです」と、Amichai-Hamburger は述べる。「人々は金銭的な見返り無しで貢献を行います。」
利他的に貢献を行いたいという意識よりも、実世界での社会的状況下では自己表現が困難であることが、ウィキペディアンを活動へと向かわせているのではないかと Amichai-Hamburger は推測している。「彼らの行動は代償です。この世界で影響力を持つための、彼らなりの方法なのです」と、彼は示唆している。
という結果・分析が行われたそうです。つまり悪い喩え方を許していただければ、「オレはこんなもんじゃねー!ほら、オレはネット上だとこんなに頼られる存在だろ!」などという意識が一部のウィキペディアンの行動を促していると。改めて、ごく一部のイスラエル人だけにしか通用しない話の可能性もありますが、同様の傾向が Digg や Twitter のヘビーユーザーにも見られると、デラウェア大学の Scott Caplan という人物が主張しています。さらに最近行われた YouTube ユーザーの研究でも、ビデオをアップロードするユーザーは利他的というより利己的な動機を有している傾向があるのだとか。
まぁ利他的であれ利己的であれ、ユーザーの行動の結果が何らかの価値に結びついていくのが「クラウドソーシング」や「集合知」なのだから、スタート地点よりもゴールに目をやるべきなのかもしれません。しかし人々が集まって何かを達成しようとした時に、個々の行動の裏に何が潜んでいるのかを把握しておかないと、先日のロシア版クイズ$ミリオネアの話のようになってしまうのではないでしょうか。あるいは利己心やプライドをくすぐるような仕掛けを備えておくだけで、クラウドソーシング的なものはずっと上手く回るようになったりするのかも(これは既にランキングや評価などといった形で、様々なサービスで実現されていますよね)。ただしそれに引き寄せられる人々が、サービスに本当に来て欲しい人々と一致しているのかどうか、という問題は残りますが。
ちなみに上記の Amichai-Hamburger さんですが、現在はSNSの Facebook を研究対象としているのだとか。SNS参加者の裏に潜む動機、というのも面白そうではあるのですが、日本に来て各種サービスのユーザーに見られる傾向、などを探ってみて欲しいなぁと思ってみたり。
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