いや、これは本気で自戒を込めてなのですが……科学的な研究結果や調査結果が、メディアを通じて伝わっていくうちにどのように誤解されてしまうか、というマンガです(via Neatorama):
■ PHD Comics: Science News Cycle
スタート地点から、簡単に訳しておきましょう:
- 君が研究する。「結論:Cを前提とし、Dという状況であると仮定した上で、Eという条件下では、AとBには相関関係が見られる(p=0.56)」
……これが翻訳されて…… - 大学の広報部がリリースを出す。「AとBの間に潜在的な関係があることが確認された(ある一定の条件下で)」
……これがピックアップされて…… - 通信社がニュースを配信する。「AがBを起こす、科学者が発表」
……これが読まれて…… - ネットで話題になる。「XXブログ『科学者達がまた我々を殺そうとしてる!』コメント『何だって?そうだと思ってた!!』」
……これがテレビ局の目に留まり…… - 全国ニュース番組で取り上げられる。「Aが必ずBを起こす――オバマ政権にもたらす意味とは?」
……これが注目されて…… - ローカルニュース番組で取り上げられる。「知られざる真実――Aが人を殺す!」
……これが最終的に…… - 君のおばあちゃんに伝わる。「Aを防ぐためにこれを付けてるんだよ」
こんな感じ。p値が0.56しかない(しかも一定の条件下で)相関なのに、最終的に「確実な因果関係」として伝わってしまう、というジョークです。
もちろん笑ってばかりもいられません。最近も「本をよく読む親の子供は学力が高い」なんていう報道がありましたし、ステップ4に加担している者として、責任を感じます。ただでさえ伝聞を通じていくなかで、情報は無意識のうちに変化してしまうものですから、センセーショナルな表現を使いたいという誘惑に打ち勝つ努力をしなければいけませんね。特に「タイトルはキャッチーにしても、本文で正しいことを書いていれば問題無いだろう」と思っていると、タイトルしか読まずに大騒ぎする人々(含む自分)もいるわけで……。
とりあえず興味深い研究・調査結果を見たら、まずは元データや情報源にあたれ(by『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』)ですね。これは何も科学ニュースだけでなく、全ての話題に関する鉄則だと思います。
> 最終的に「確実な因果関係」として伝わってしまう、というジョークです。
ジョークではすまないし、科学ニュースに限った話でもないと思う。
> 「本をよく読む親の子供は学力が高い」
家庭の蔵書数と子供の学力に正の相関があるという調査結果に基づいて、税金で多くの本を購入して家庭に配布しようとした自治体がアメリカにあったそうです。最後は思いとどまったそうですが。(Freakonomicsによる。)
かつて、ライス国務長官(当時)の発言を、「我々は戦術的に多くの誤りをおかした」なるヘッドラインをつけて伝えたメディアと、「イラクで多くの間違いをおかした」とつけたメディアがあって、「戦術的に」を削っちゃうのはどうなのよ、とか思う一方で、1行で正確にモノを伝えるなんて不可能だよね、と感じました。
投稿情報: 774 | 2009/05/30 19:06
図中の記号は、有意差を示すp値ではなく、相関係数値を示すρ(ロー)ですよ。
ρ=0.56のように「弱い相関」しか示していない結果にもかかわらず、センセーショナルに報じられてしまう、というオチにかかわる重要なファクターですので、お間違いのなきように。
(逆に、もしもp値だとすると、あまりに高くて有意差が出なかったという逆の話になるかと・・・。)
投稿情報: Masao | 2009/05/30 19:56
みなさま、コメントありがとうございます。
> 774 さん
おお、『ヤバい経済学』は読んでいたのですが、そんな事例が紹介されていたのをすっかり忘れてしまっていました。ありがとうございます。「戦術的に」を削った例もひどいですね……確かにタイトルを考えるのは難しいことですが、これでは恣意的に行ったと非難されても言い逃れできないと思います。
> Masao さん
ご指摘さりがとうございます!結局、書いてる本人があまりよく理解していなかったというオチがついてしまいましたね(お恥ずかしい限りです)。チャンチャン。
投稿情報: アキヒト | 2009/05/30 20:17