これは何も Twitter に限った話ではないのですが。A VC でちょっと面白い話が紹介されていました。題して「Twitter は視聴率測定機になるか」:
■ Why do Viewers Surf? (Simulmedia)
日本でも「テレビジン」(2ちゃんねるのスレの伸びで注目されているテレビ番組をグラフ化してくれるサービス)などというサイトがありますが、特に若い人々の間では「テレビを観ながらネットに書き込む」という行動は珍しくなくなりました。最近スポーツ関係で大きな試合(WBC決勝戦や、W杯最終予選など)があると、Twitter のタイムラインが関連コメントで埋まる、なんて経験をされている方も多いでしょう。そんなわけで、Twitter に投稿されるメッセージを元データとして、視聴者の視聴行動を分析できないかと考えたのが上記の記事。特にこの研究では、「(面白い番組を探すために)チャンネルを換えている("channel surfing")ところ」という書込みを抽出して、内容を8つのパターンに分類しています:
念のため、8つのパターンとはどんなものかを訳しておきます:
- ANTICIPATION (期待):番組が始まるまでの時間を潰すためにチャンネルを換えている。(全体の1%)
- SEARCHING (検索):観たい番組を探すためにチャンネルを換えている。(全体の6%)
- MULTI-TASKING (マルチタスク):チャンネルを換えながら、更にTwitter しながら、他に何かしている。(全体の8%)
- SPLIT-ATTENTION (複数チャンネルの視聴):いくつかの番組を同時に観ようとしている。(全体の9%)
- ABOUT TO SLEEP (寝るところ):寝てしまうまでテレビを観ようと、適当にチャンネルを換えている。(全体の11%)
- RELAXING (リラックス):リラックスした状態でチャンネルを換えている。(全体の18%)
- BORED & AWAKE (飽きているけど眠くない):飽きていて寝ようとしているのだが、眠れずにチャンネルを換えている。(全体の22%)
- CONVERTS (転向):チャンネルを換えているうちに、面白い番組が見つかった。(全体の22%)
で、本題はここからなのですが、この結果を受けて A VC の Fred Wilson は
While the data in and of itself is interesting, I am more intrigued by the idea that Twitter can be used as a panel that once it is large enough (and maybe it is already) that can produce much of the same data that is currently locked in set top boxes and controlled by the cable companies.
(Simulmedia 社の)データや分析自体が興味深いものだけれど、僕は別のアイデアの方に惹かれている。そのアイデアとは、「Twitter のユーザー数が十分大きくなれば(既に十分な規模に達しているかもしれないけれど)、Twitter は視聴者のサンプルとして機能し、現在ケーブルテレビ局の手中に握られているものと同じデータを提供することが可能になるかもしれない」というものだ。
と主張しています。テレビ関係者がデータを開放しなくても、いまなら Twitter などのライフログからデータをもってくれるんですよ(そこにビジネスチャンスがあるかもね)――といったところでしょうか。まぁ、「Twitter の90%は10%のユーザーで出来ています」なんて話もありますし、Twitter だけ分析していても視聴者全体を捉えたことにはならない、という反論は出て来そうですが。
話は変りますが、ちょうど今週の『週刊 東洋経済』(2009年6/13号)の特集は「大激震!広告サバイバル」。冒頭近くにこんな一節がありました:
だが広告市場にとって、最も重要な問題は不況ではない。それはマス広告の地盤低下に代表される構造変化である。2000年代以降、費用対効果のはっきりしないマス広告は嫌われる傾向が強まり、代わって売り上げに直接結び付きやすい販売促進やウェブのキャンペーンに予算配分をシフトする企業が大勢を占めるようになった。
広告主の団体である日本アドバタイザーズ協会の小林昭専務理事はこう代弁する。「テレビには視聴率があるが、企業が求めているのは、そういった数字ではない。広告を打った結果、来店率がどれだけ上がったとか、そういうデータが欲しいわけです」。
現在の技術ではまだまだ難しいですが、消費者の行動が記録されるライフログサービスであれば、「○○というテレビを観た人は××を買う率が上がった」などという分析を行えるようになるかもしれません(少なくとも「△△という番組/CMは評判が良かった/悪かった」程度の分析はすぐに行えるでしょう)。それを狙って、大手広告代理店がライフログサービスに出資を行う……なんて可能性もあり得なくはないかも。
< 追記 >
なんてことを書いたら、はてブのコメントで@westerndogさんが既に実践されていることを知りました(相変わらず観測範囲が……):
■ またアニメ見てる
上が今見ているアニメを Twitter とはてなハイクに簡単投稿できるサービスで、下が視聴状況を告知するbot:
■ またアニメ見てる関東番組告知Bot (MataAnimeMiteru) on Twitter
で、さらにデータをランキング化したのが以下のサイト:
ということで、分野限定のサービスにはなりますが、文字通り「視聴率」的なものをこちらで確認できるわけですね。実際の視聴率と比較したらどんな結果になるんだろう……という素朴な興味を書き捨てしておくとして、こういうの面白いなぁ。テレビ局はもっと Twitter 活用を考えればいいのに(って、別に Twitter に限定しなくても良いのですが)。
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